喰って喰って喰いまくれ!

マカロニ・カニバル・スプラッター

10連発

 

今回のテーマは、イタリア製のカニバル・スプラッター。ようするに、人喰い映画。

ゾンビやら人喰い族なんかの映画で、僕の好きな映画を10本集めてみました。

観終わった後、絶対にお腹がイッパイになっている

というか、もう何も食べられないと思うので、

始める前に、ちゃんと腹ごしらえしておく事。

って、自分に言い聞かせて、いざスタート!

★某月某日午後6時00分

 

夏場なので、まだ外は明るい。こんな明るい内からホラー映画、それもイタリア製の過激なスプラッター映画を観るのは、何とも気が引けるけど、10本も観なきゃならないので、とにかく始めます。

まず1本目は、今回の中で一番年代の古い『悪魔の墓場』(74)から。

 

 イタリア製というよりも、スペインとの合作なんだけど、これは一応、ロメロの『生ける屍の夜』(『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』)のリメイクと言われていた映画。でも、勿論正式なものではなく、あくまでもパクリ。でも、観た感じ、人喰いゾンビ(これはロメロのオリジナル)が出てくる事以外、あまりパクっているっていう印象はないんだけど。

 日本では、ゾンビ映画というと、劇場公開されたものよりも、圧倒的にビデオのみでリリースされた作品の方が多いんだけど、これはそんな数少ない劇場公開作で、75年当時、『悪魔のはらわた』(アンディ・ウォーホル監修)、『悪魔のいけにえ』(トビー・フーパー監督)に次ぐ、ヘラルドの“悪魔シリーズ”の第3弾として公開されていたのが、今となっては懐かしい思い出。当時にしては、かなりの過激な内容で、見るからにスペイン人風の男の死体が、たった今、死体安置所から抜け出して来ました、みたいな風貌でヨロヨロと登場するのは、今観ても結構恐ろしい。当時のギャルに大人気だったレイモンド・ラヴロックが主演しているという事でも話題でしたが、みんな、観たのかナー、この映画。多分、ショックを受けたんだろうナー。可愛そうに。

            

★午後7時45分

 

イヤー、今日は何故か調子がイイ。やっぱり、大好きなゾンビ映画でいきなり幕を開けたからだろうか。この調子でドンドン行きたい。続いての第2弾も、ゾンビ映画です。

 

 もう、これは定番。『サンゲリア』(79)です。今は亡きルチオ・フルチ監督の最高傑作。ロメロの『ゾンビ』に刺激されて作られた、やっぱりパクリ映画です(イタリアでの公開タイトルが“Zombi 2”)が、ある意味、本家を上回ってしまった、類い希なるパクリ映画の最高峰。ここまでやられると、ロメロも文句言えなかったとか。それも分かるような気がします。

 これも80年に日本で公開されましたが、配給元の東宝東和が、一生懸命、ゾンビ映画である事を隠して宣伝していたのが、今となっては笑えます。しかし、“サンゲリア”っていうタイトルは如何なものか。東和得意の和製イタリア(?)語なんだけど、全くもって意味不明。劇中で語られる“ゾンビ”というセリフが、全て“サング”に差し替えられていた(字幕上で、ですが)のにも大笑いしました。よっぽど、ライバル会社であるヘラルドの『ゾンビ』を毛嫌いしていたって事なんでしょうけど、その後、今度はヘラルドが、『ゾンゲリア』と題した映画を公開した時もビックリしたっけ。因みにアメリカでの公開タイトルは“Zombie”で、ホラー映画に疎い人を益々混乱させていました。

 それと、僕が今回観たのはアメリカ盤の輸入LDで、日本では当初、東芝がカット版で、その後ソニーから完全版でビデオがリリースされましたが、特に2枚組LDは2万円近くもボッタくっていた代物で、貧乏人には手が出ませんでした。しょうがなしに僕は、それまで持っていた輸入ビデオ(悪名高きウィザード・ビデオ社の画質の超悪いモノ)の上から、違法レンタルで借りてきたそのソニー版LDをダビングした事があります。その後はこの輸入LDでもっぱら楽しんでいますが、最近JVDからリリースされた日本版DVDは、音声が何故かモノラル(輸入LDはドルビー・デジタル・ステレオ)になっていて、特典映像もなかったので、買わなかったのですが、どうやら巷の評判も不評のようです。

 とにかく、何度観ても面白い、マカロニ・ゾンビものの最高傑作で、これさえあれば、他のゾンビ映画は観なくてイイと、僕は断言出来ますネ。

     

★午後9時30分

 

と、言いながら、懲りずに他のゾンビ映画も観ます。次なる作品は、同じくルチオ・フルチ監督の『地獄の門』(80)。『サンゲリア』の後、フルチが続けざまに撮った、これまたゾンビ映画の1本。

 

                  

 今回は、ストレートなゾンビ映画じゃなくて、ちょっと趣向を変えている所がポイント。亡霊とゾンビとを組み合わせているんだけど、何度観てもストーリーが理解出来ないという所が、これまたフルチ監督らしい所でもあります。前作同様に、グロテスクなシーンはいっぱいありますが、特に凄いのは次の3つ。

@ 堕天使に睨まれて、口から内蔵を吐き出す女の人

A 町のオッサンに疑われて、固定式電動ドリルで、脳天を貫通させられてしまう、○○ガイ

B 堕天使の超能力(?)で、突如吹き荒れる蛆虫の嵐

 特に僕はBのシーンが好きで、本当に100万匹の蛆虫が集められて撮影されたこのシーン、蛆虫の嵐に巻き込まれて、思わずゲロを吐いてしまうジャネット・アグレンですが、見た所、あのゲロは本物でした。何というリアリズム!

   

★午後11時15分

 

イヤー、やっぱりフルチのゾンビ映画は面白い。益々調子が出てきたような感じ。調子に乗ってドンドン行きましょう。続いては、またまたフルチ監督の作品で、『ビヨンド』(81)に御登場願いましょう。

 

 何でも最近、タランティーノ率いるローリング・サンダーっていう配給会社が、アメリカでニュー・プリントによるリバイバル上映を行ったとか。さすがに分かっていらっしゃる。これも前作同様、“地獄の門が開いて死者があふれ出す”というテーマのゾンビものですが、まぁ、やってる事は、あまり変わっていません。

 とにかく、ひたすら残酷な映像を見せる事のみを追求したゾンビ映画で、これまたストーリーは二の次・三の次になっています。だから、何度観ても理解出来ず、いつも首を捻って終わってしまうのですが、この映画の見所は、やっぱりスプラッター・シーンですからネ。硫酸で顔を溶かされるオバさんとか、ピストルで顔面をブチ抜かれて死ぬ少女ゾンビ、突然発生するクモ軍団とか、クライマックスは『悪魔の墓場』同様、病院が舞台だから、死体には事欠かず、腐った死体が多数出てきて、ゾンビ・ファンの溜飲をバッチリ下げてくれています。

 聞いた所によりますと、イタリアでは2時間のロング・バージョン(日本版は90分)で公開されたとかで、それも観たい気もしますが、それでも多分、ストーリーは理解出来ないでしょう。あくまでもフルチ監督ですから。

 

★午前0時45分

   

日付も変わった事だし、ここらでちょっと休憩。夏だし、部屋は暑いし(一応、冷房完備ですが)という事もあって、ちょっとシャワータイム。ナンか、恐い映画を観た後、風呂場に行くのはちょっとアレなんですが、取り敢えず勇気を出して行きましょう。その辺の部屋の電気、全部点けまくりましたが。

そしてスッキリした後、冷たいアイスコーヒーなぞ飲みながら、続いては5本目に突入します。

                                  

★午前1時10分

次は、またしてもフルチ映画、『墓地裏の家』(81)です。

 

 これで4本目のルチオ・フルチ作品。ナンかこうなってくると、フルチ特集みたいになってきてますが、一応これが本日最後のフルチ映画になります。

 今回もまたまたゾンビ映画ですが、そう思って観ると肩透かしを食らうので、要注意です。墓地裏の家に纏わるミステリィ風味の映画で、ゾンビ自体はなかなか出てきません。しかし、ゾンビがいるんじゃないか、と思わせるサスペンス演出は、それまでのフルチ作品には見られなかったもので、この映画でフルチ監督の演出は、格段に上達していると思いました。まぁ、所詮、知れてますけど。

 クライマックスになってやっとゾンビ登場。ガスマスクを被ったような、フランケンシュタイン博士っぽい風貌で、それで一気にストーリーの謎が解けるかと思いきや、主要人物が全部死んでEND。やっぱり今回も、理解不能でした。でも、ゾクゾクするような恐さを楽しむには、最適の一編で、これでフルチ監督が、ゾンビと縁を切ったのも、分かるような気がしますが、それ以後生彩がなく、自身も病弱気味だったという事は、もしかすると、ゾンビ映画ファンの呪いだったのかも知れませんネー。

 因みに、その後フルチは『サンゲリア2』を撮ってますが、あまりに酷い上、途中で監督を降板したという事実からも、今回は除外しました。

 

★午前2時50分

 

いよいよ折り返し地点。残りは5本だ。頑張って行こう。次はこれもゾンビ映画だけど、ルチオ・フルチじゃないヤツで、フルチ以上に怪しいバッタもんゾンビ映画といわれている『ヘル・オヴ・ザ・リヴィング・デッド』(81)。何とも長ったらしいタイトルが、余計怪しい、まさに怪作です。

 

 この映画、日本では86年にビデオ・リリースされましたが、その前年頃に、アメリカで公開されていた“Night of the Zombies”という映画があり、観たいナーと思っていた所、実はこの映画だったという事を知った時は、ビックリしたという思い出があります。しかも、後にLDがリリースされた時、何故か『死霊の魔窟』なんてタイトルに変わっちゃって、何とも混乱させられる映画になっているのですが、映画の出来もハッキリ言って、観ている者が混乱してしまうぐらいのワケワカな内容になっています。それでも今回取り上げたのは、まぁ、やっぱり、スプラッター・シーンがかなり強烈だからでしょうか。

 内容はサイテーですが、いかにもフルチ・ゾンビ映画を意識したと思われるスプラッター・シーンだけは何とか観られます。尤も、内容が酷いので、いくらスプラッター・シーンが凄くても、全然盛り上がらないのは残念ですが。監督のヴィンセント・ドーンは、ブルーノ・マッティというイタリアの監督の変名で、さっき挙げた『サンゲリア2』で、フルチの後を受けて監督していましたが、その両者を観ても分かる通り、かなりデタラメな監督さんで、この作品でも、そのデタラメさ(ジャングルの動物のシーンが、別の映画からのフッテージだったり、 何故か音楽に、ゴブリンの『ゾンビ』の音楽を無断で使用したりしている)が一気に爆発しています。これでスプラッター・シーンもダメだったら、本当のダメ映画なのですが、そこはやっぱりマカロニの人、ちゃんと落とし前は付けてくれていました。

 それにしても、ラストでのヒロインの扱われ方、アレにはビックリですね。お陰で、ちょっと眠そうになっていた所、目が覚めてしまいました。ありがとう。

      

★午前4時40分

 

続いては7本目。これまたゾンビ映画で、『吸血魔の街』(80)です。

 

 奇しくも、その前の『ヘル・オヴ・ザ・リビング・デッド』と同時期にビデオ・リリースされていた映画で、ビデオ・リリース時のタイトルは『ナイトメア・シティ』でした。つまりこれも、LDリリース時に改題された訳ですネ。

 今度のゾンビは結構威勢がイイです。なんせ、マシンガン持ってロンドン中を走り回る訳ですから。こんな元気なゾンビは初めてです。といっても、この映画での彼等って、別に死体じゃなかったんですネ。原発の事故で漏れた放射能をモロに被って、凶暴化した人たち、っていう事に一応なっているんですが、しかし見掛けはどうしてもゾンビで、やっている事は吸血鬼というと、何とも盛り沢山なゾンビたちです。

 ラストが気に入らないという人が大勢いるようですが、僕は○です。だって、トビー・フーパーがリメイクした事でも知られる50年代の名作SF『惑星アドベンチャー』と同じオチなんだもん。というか、単なるパクリなんですけどネ。

 

★午前6時20分

 

もう外はビンビンに朝です。今からラジオ体操に向かう子供達の明るい声を聞いていると、無性にお腹が空いてきました。ようし、僕もラジオ体操して目でも覚まして、それから朝食タイムにしよう。

という事で、ちょっと休憩。ゾンビ映画ばかり観ていたけど、まだ食欲はありました。

 

★午前6時50分

 

目も覚め、お腹もイッパイになった所で、次に行きます。8本目は、やっとゾンビとおさらばして、今度は人喰い人種映画。その名もズバリ『食人族』(80)です。アー、先に食事済ましておいて、よかった、と。

   

 これもこの種の映画の定番ですネ。いわゆる、ドキュメンタリーの形を取ったニセ・ドキュメント、即ち、フェイク・ドキュメンタリーのハシリとなった作品で、最近では大ヒットした『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』が、この手法をマネていました。

 ただ、この映画の場合、その手法のお陰で、後味が凄く悪くなっているような感じで、これは最初から狙った効果なのか、それとも偶然か。劇場公開当時(ヒットした)は、何か、イヤなものを見せられたっていう感じがして、製作態度そのものに疑問を持ったものでしたが、今となっては、笑いながら観るのには最適の映画になってしまった、というのは、時代の流れですかネ。

 因みに監督のルッジェロ・デオダートは、これの前にも『カニバル』という食人族ものを撮っていて、それで培ったノウハウが、かなりこの映画に活かされているようです。

 

★午前8時35分

 

フー、あと2本。頑張って行こう。続いての作品も、また人喰い人種ものです。題して『人喰族』(81)。

 

 日本では『食人族』の数年後に公開されて、全く話題になりませんでしたが、作られた時期はほとんど同じです。タイトルも似ているので、よく混同している人がいますが、アチラは『食人族』で、コチラは『人喰族』です。ま、どっちでもイイようなもので、内容もほとんど変わりません。

 唯一違うのは、前作がドキュメント・タッチだったのに対し、今回はあくまでもドラマ仕立てという事。その分、感情の起伏なんかが表現されていて、しかも観客との一体感も生まれているから、コッチの方が楽しめます。人を喰う映画で楽しめるっていう表現もどうかと思いますが。

 ただ、白人が、ジャングルの原住民を差別・迫害しまくり、その挙げ句の果てに、喰われてしまうというパターンになっているのは、両作とも全く同じ展開で、結局言いたい事は同じだという事ですネ。

 つまり、前半は、白人による原住民への殺戮、後半がその復讐として展開される、原住民による人喰いというパターンで、ナンか、2本連続で同じような映画を観ていると、どっちがどっちだったか、よく分からなくなってしまいました。カメを解体するのが『食人族』で、バカな白人のチン○が切断されるのがこの『人喰族』と、よーし、何となく分かりました。分かった所で次に行きます。

 

★午前10時10分

 

後1本なんだけど、9本目を観終わった後、急に睡魔に襲われて、ダウン寸前。これはいけない。あと1本なんだから、頑張らねば、という訳で、急遽また、シャワーターイム。そして熱いコーヒーを飲み干して、取り敢えず、最後の1本に挑みます。

★午前10時30分

 

本日最後の1本、10本目は『人間解剖島/ドクター・ブッチャー』(80)です。

 

 で、その最強の2本、結構観た人がいるんじゃないでしょうか。僕もその一人でした。今回は、ある島で、人間をゾンビに改造する実験をやっていた博士がいて、人喰い族とゾンビが一緒に暮らしていたという、何とも恐ろしい内容で、遂に人喰族とゾンビの合わせ技で勝負した作品です。その発想には脱帽してしまいますネ。お陰で、アブなかった僕も、一気に目が覚め、スッキリした気分になってしまいました。

 ただ、日本で公開されたのは、オリジナル版を改編したアメリカ公開版で、オリジナルではタップリ聴けるニコ・フィデンコ作曲による快調なテーマ音楽が、何か、別の曲に差し替えられて(曲の上から無理矢理重ねて録音されている!)いて、それがちょっと残念でした。でも、映画は快調そのもの。なにせ、ゾンビと人喰い族が一気に出てくるんですから、ナンか、“オール人喰い大進撃”みたいな雰囲気になっていて、楽しいといえば楽しいですが。作られた時期からして、後半の舞台となるあの島、もしかすると『サンゲリア』でもロケされた島なんじゃないでしょうか。主演は同じイアン・マカロックだし。何でも一説によると、ジョー・ダマト監督の怪作『ゾンビ’99』は、明らかにこの映画に登場した島でロケされているらしく、要は、みんな一緒くたにして、まとめてソンビ映画を撮っていたと、そういう事なんでしょう。さすがはイタリア・マカロニ精神ではあります。

 

という事で、午前11時55分、無事、全工程終了致しました。怪我人も死人もなく、よかったです。もっとも映画の方は死人だらけでしたが。それにしてももう昼間ですネ。普通なら昼飯時ですが、今日は、ちょっと遠慮しておきます。っていか、眠いんですヨ。やっぱり、食欲より睡魔にはかないません。バタっと倒れるように寝てしまった、真夏の真っ昼間の僕でした。アー、太陽が眩しい! 

 

                

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