2006年度マイ・ベスト10

 

 

 

1位 『父親たちの星条旗』

1位は前年に続いてイーストウッド映画。“硫黄島2部作”の内の1本で、先に公開された“アメリカ側から描いた”一編。2作で1本という考え方も出来るんですが、この2部作は、どちらもそれぞれ1本の映画として成立しているので、1本ずつの捉え方をしました。

個人的には、コチラの方が、映像的手法やストーリー展開に起伏があるという意味合いで、出来は上だと思います。戦争が終わっても、国の為に振り回される兵士たちの苦悩を描いたこの映画は、イーストウッド監督の現代に対する鋭い眼差しが光っているようで、単なる反戦映画の枠を越えた素晴らしい作品になっていました。まさに、今の時代の国(及び、戦争)に対する思いを、今一度見つめ直すという意味合いで、今こそ絶対に観る必要のある“今”を感じさせる映画ですね。

 

 

2位 『スネーク・フライト』

2位は、昨年bPのバカ映画。こういうストレートでエネルギッシュなバカ映画は大好きですな。2006年は航空機関連の映画が多かった訳ですが、その中でも“動物パニックもの”との合わせ技で来たこの映画のバカバカしいアイデアが秀逸。ヘビに溢れ返った機内を想像するだけでもを笑ってしまいますな。登場するヘビと人間との絡みは、ほとんどCGだと思いますが、こういう使い方はグーですな。バカ映画には、ドンドン使って欲しいもんですな。

 

 

3位 『M:i:V』

トム・クルーズの映画って、こういうベストテン圏内に入ってくる事はあまりないと思っていたんですが、前年の『宇宙戦争』に続いてランクイン。吹っ切れたかのように一挙娯楽路線を突っ走るトム君には感心してしまいますな。シリーズの3作目で、実質的な面白さは1作目に及ばないものの、その次の2作目がダメだったからか、今回は再びボルテージが上がったようで、全編走りまくるトム君の真摯な姿勢に感動してしまいました。この勢いで突っ走れ、トム!

 

 

4位 『ホステル』

東京では10月公開だったけど、我が大阪では年が明けてからの公開になった為、本来なら2007年度扱いになるところだったんですが、一足先に輸入DVDで観たので、辛くもランクインしたもの。昨今、過激一辺倒になるホラー映画の中でも、『悪魔のいけにえ』以来、不条理性を強調したこの映画の超豪速球のド真中さに惚れました。

前半の能天気で明るいムードが、後半ド〜ンと暗くなる辺りの展開ぶりも見事で、そこにさらに輪をかけるようなスプラッター描写が強烈で、ホラー映画としては、昨年度bPの仕上がりでした。「思った程スプラッターしてない…」という意見をよく聞きますが、そういう人は、ホラー映画としてのスプラッター描写の在り方をもう一度学習して頂きたいものですな。一番良い例が名作『悪魔のいけにえ』。スプラッター描写が希薄でも、恐怖演出が出来るというトビー・フーパー先生の教えを、イーライ・ロス監督は忠実に継承している訳です。

 

 

5位 『新サランドラ』

続いてもホラー映画。ただし、コチラは日本未公開で、今の所も公開の予定、及びDVDリリースも無いという作品。なので、これも輸入DVDで観たものでした。

悪名高いウェス・クレイヴンの怪作『サランドラ』のリメイクですが、どう見てもコチラの方に軍配が挙がる、リメイク作品では稀な例ですな。ま、元々の才能が違うんでしょうけど…(笑)。スプラッター描写も、上記の『ホステル』と並んで昨年度のベストバウトで、コチラは不条理性よりも怪物性を強調。放射能実験によって怪物化したモノたちが、その怒りを観光客にブチまけるという70年代怪物ホラー(『プロフェシー/恐怖の予言』等)の伝統を受け遂いでいるようで、観ていて爽快ですな。ストーリーも何もなく、ただ殺しがあるのみという潔さも気持ち良いですな。『ホステル』同様、クライマックスに大逆転があるという構成も、ありきたりではありますが、映画として成立させる為には必要不可欠ですな。

 

 

6位 『インサイド・マン』

こういうドンデン返しのある映画は好きです。最近は、ネット上ですぐにネタバレする危険がありますが、この映画はあまり話題にならなかったせいか、その犠牲にならなくて済んだようですな。っていうか、これはネタバレしにくい映画でもありますね。というのも、ストーリーを説明しにくいから。映画の中に色々仕掛けがあって、観終わってから、フムフムと記憶の中でフラッシュバックさせてやっと理解できるという、そういう映画になっているからで、そういう意味では、上手い映画ですな。現実では無理でも、せめて映画の中だけは、鮮やかに犯罪が成功してしまうのは、スカッと爽快ですね。これこそが、映画の醍醐味だと言いたいです。

 

 

 

7位 『DEATH NOTE』

前編と後編が2本に分かれて約半年で連続公開されたという特殊な映画。どうしようか迷ったんですが、取り敢えず2本まとめて1本の映画として捉えました。

宣伝ばかり煽ってつまらない日本映画が多い中で、一人(1本)気を吐いたのがこの映画で、現代に通じるテーマとスリリングなストーリー、さらに推理的興味とショッキングな展開と納得できる結末…という、描かれた要素と題材全てがピッタリ決まった昨年度の日本映画の最高作。観終わった後「面白かった〜!」と思える、久々の日本映画でした。つまらないテレビ・ドラマ・リメイクなんかより、こういう映画をドンドン作って欲しいですな。

 

 

8位 『007/カジノ・ロワイヤル』

8位は007の新作。そもそも007映画がベストテンにランクインする事自体稀で、ワタシ的にもおそらく『007/オクトパシー』以来ではないかと。それだけ、以後の007に面白いものが無かった(それでいてずっと観続けてきたのも事実ですが…)からとも言える訳ですが、またまたボンド役が代わっての本作は、同時に作り手の志も変わったというか、心を入れ替えたとも言うべき傑作になっていて、久方ぶりに胸に迫るボンド映画を見せて頂いたような感動を覚えたものでした。確かに、新しいボンド役に対して色々意見もあるでしょうけど、ここはひとつ、今後の動向を見守りたい、その期待と一心で選んだのでありました。

 

 

9位 『硫黄島からの手紙』

1位と同じく、9位もイーストウッド映画。これも何年ぶりでしょうかねぇ。そもそもイーストウッド映画が1年間で2本も観られるという嬉しい年は、ここ何年もなかったですからね。で、そのどちらもが傑作で、共にベストテンにランクインしたというのも、おそらく『許されざる者』『ザ・シークレット・サービス』が公開され、共に傑作だった1993年以来という事になりますな。

“硫黄島2部作”という扱いなので、連続で公開されたのも当然ですが、アメリカ側から描いた『星条旗』と日本側から描いた本作で、これ程テイストの違う映画も珍しく、とにかくこの映画を観て最初に感じた事は、「これって日本人の監督が撮ったのでは…!? 本当にイーストウッド監督作品なのか…?」という思いで、それ程、日本人の心情や様式を丹念に描いた一編だったんですね。前作と比べ、やや淡々とし過ぎている嫌いはありますが、今の平和ボケした日本人に、ある種のカンフル剤を打ち放ったという意味合いでも、これは2006年最も重要な“日本映画”だと思いました。

 

 

10位 『御巣鷹山』

航空機関連の映画が多かった06年を象徴するという意味合いで、この映画を10位にランクイン。最初は迷ったんですが、やはり、忘れてはならないとう事もあり、ここに記しておく事にしました。(同系統?の『ユナイテッド93』と迷いました…)

確かに、映画としては完成度は低く、演技も陳腐でテクニックも稚拙なヘタクソな映画ではあるんですが、根底に流れる志というか、この事件に対する熱意というものがヒシヒシと感じられて、思わず選んでしまいました。取り扱った題材が題材だけに、話題になったという点でも渡邊監督の最高作と呼んでもイイのではないでしょうか。映画本来が持つ“メッセージ性”と“見世物”的な要素が最も感じられた映画という点でも『ワールドトレード・センター』なんかよりも、ドキドキする興奮を味わう事が出来ました。

 

 

 

引き続きワースト5はコチラ

 

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