これでいいのか!? DVD!

【第6回】

 DVD徹底比較

 

 

どうしようか迷っていたんですが、ついつい誘惑に負けて、『ビヨンド』のDVDを買ってしまいました。で、買ってビックリ。これはヒドいんじゃないかと…。どう酷いのかというと、これはあくまでも先に購入していたアメリカ盤DVDと比較してという意味なんですが、どうも仕様に問題があるんじゃないかと思いまして、そこで、両者を徹底比較してみようという気になったのでした。

基本的に、本編自体のバージョンは同じようです。『ビヨンド』には、83分ぐらいのカット・バージョンもあると聞きますが(別メーカーのアメリカ盤としてリリースされている)、今回日本でDVDリリースされたものは、以前の大映版ビデオ&LDや、アンカーベイ版DVDと、全く同じと言ってもいいでしょう。

で、まず画質についてですが、これは観た人の主観や、再生環境にもよりますので、一概にどちらがイイとも言い難いのですが、パッと観た感じで言いますと、アメリカ盤も日本盤もほぼ同じか、若しくは若干、アメリカ盤の方が良いようです。

で、問題なのは、音声仕様なんですよね。オリジナル音声はモノラルの映画なんですが、アメリカ盤は5.1chサラウンド音声にリミックスされていて、これが実に効果絶大。それに対して日本盤は、単なる2chのステレオというのが、何と言っても痛いんですね。2chステレオの場合、サラウンド・プロセッサー等の機器を使用する事により、ディレイ信号でリア・スピーカーに音を回して、ドルビー・サラウンドと同様な効果を得る事が出来ますが、5.1chサラウンドは、最初からフロントもリアも左右に音声が分かれる音声設計になっていて、フロントだけがステレオになっているドルビー・サラウンドとは、迫力・臨場感という意味では、全く違う効果があります。

勿論、映画やDVDソフトによっては、その効果がよく表れているものとそうでないものとがあり、一概に5.1chサラウンドだからといって、臨場感が凄いとも言えない訳ですが、少なくともこの『ビヨンド』に関しては、アメリカ盤(アンカーベイ盤)の迫力は、格段に凄いものがありました。

それは、もう実際に聴いた人でないと分からない感覚ではありますが、この約1年間、様々なDVDソフトで5.1chサラウンド仕様を体験した僕にとって、この『ビヨンド』ほど、素晴らしい効果を上げている作品はなかったと思えるぐらい、優れモノの作品だったのであります。

にも関わらず、日本盤ではこの効果が全く得られないというのは、何とも歯痒く、ある意味、この『ビヨンド』の面白さは、その5.1chサラウンドの迫力によって効果が120%発揮されていると言っても過言ではないぐらいなのです。なのに…、なのに日本盤は…。

他にも、アメリカ盤には、ドルビー・サラウンド音声、オリジナルのイタリア語(モノラル音声)、そして出演者による音声解説と、全部で4種類の音声が収録されていて、とても豪華な仕様になっている訳ですが、日本盤は、ステレオの英語とモノラルのイタリア語のみ。おまけに、特典仕様に到っては、ここで比較するのもおこがましいぐらい、日本盤は貧弱な仕様になっていて、唯一誉められるべきは、サントラ盤音声が聴けるアイソレイテッド・スコア仕様になっている点ですが、これにしたって、1曲・1曲、画面から選択して聴かなければならない(全曲通しては聴けない!)という、使い勝手が悪い仕様になっていて、第一、既にサントラ盤を持っている人にとっては、全く必要のない仕様であると言え、ハッキリ言って、ショボいトホホな仕様である事は間違いないでしょう。

 

取り敢えず、両者の仕様の違いを表にしてみましたので、ご参照を。
(赤字が、両者の違う部分です)

 

画面仕様 音声仕様 特典

 アメリカ版DVD

 

(発売元:アンカーベイ)

スコープ・サイズ(スクイーズ)

 

※当然ながら、

 画質は最高です!

 ★★★★

1.英語(5.1chサラウンド)

2.英語(ドルビー・サラウンド)

3.英語(モノラル)

4.イタリア語(モノラル)

5.音声解説

 

※5.1chの迫力は特筆もの。

 他の映画と比べても、

 聴き劣りしません!

 ★★★★★

 

国際版予告編

ドイツ版予告編

アメリカ再公開版予告編

Necrophagiaによるミュージック・ビデオ

ルチオ・フルチ監督インタビュー

ドイツ版のカラー版オープニング

ポスター&スチール・ギャラリー

デビッド・ウォーベックとカトリオーナ・マッコールによる音声解説

48ページのカラー・ブックレット(※)

6カ国のポスター・レプリカ(※)

 

日本版DVD

 

(発売元:パイオニア)

スコープ・サイズ(レターボックス)

 

※上と同じぐらいでしょうか。

 ★★★★

1.英語(2chステレオ)

2.イタリア語(モノラル)

 

※これが問題。

 ステレオ感もあまりナシで、

 5.1chと比べると

 月とスッポンですなぁ…

 ★★★

国際版予告編

ポスター&スチール・ギャラリー

アイソレイテッド・スコア集

 

確か、最初に『ビヨンド』の日本盤DVDリリースがアナウンスされた時は、“デラックス版”という触れ込みだったと思うのですが、それが結局“特別版”としてリリースされた辺りに原因があるのではないかと思えるのですが、この“特別版”というのも、凄い誇大表現のように思えますね。別にメイキング等の特典映像が付いている訳でもなく、あるのは予告編とスチル・ギャラリーだけで、それに加えて例のサントラと、これだけで“特別版”と銘打ってしまうのは如何なものかと…。

この作品は元々、ビーム(現・ハピネット)から昨年の4月頃にリリースされる予定だったのが、権利関係の縺れから、一旦発売中止になり、秋になってパイオニアからリリースされた訳で、この辺りにその問題が隠されていたかも知れません。

(その後ハピネットからリリースされた同じフルチ監督の『墓地裏の家』のジャケットに『ビヨンド』のデザインが混在していたという事件も、その辺りに原因があったのかも…!?)

実質的にパイオニアは販売を受け持っているだけで、発売元はニューラインという会社で、発売代理をパノラマ・コミュニケーションズとアドネスという会社が担当しており、どちらがどういう仕事を受け持っているのかは分かりませんが、多分、DVD化の権利を得た時に、モロモロの契約で、この程度の仕様でしかリリースできない状況になったんでしょうけど、これは今後のホラー映画のDVD化に関して、ある意味重要な事件になりますね。

何故、マイナー会社が発売しなければらないのか…(大手のパイオニアなら、もっと金を積めただろうし…)、何故ホラー映画には、大手の会社が手を出さないのか…(他にもJVDなんていう、最悪メーカーもあるし…)など、ホラー映画の日本版DVDをリリースする裏側には、これからも色々な問題をクリアしていかないと、我々が満足出来る仕様の作品は、なかなか目にする事が出来ないという事になりそうです。

因みに今回の検証で、面白い事が分かりました。

下の表をご覧頂ければ分かりますが、アンカーベイ版DVD、パイオニア版DVD、そして大映版LDと、それぞれで微妙に画面のアスペクト比が違っていました。

元々は【1:2.35】というシネマスコープ・サイズのこの映画ですが、各バージョンによって、画面の横幅が少しづつ違っていました。

 

アスペクト比徹底比較

  アスペクト比

 アメリカ版DVD

 

(発売元:アンカーベイ)

スクイーズ方式のスコープ・サイズですが、アスペクト比はほぼ1:2.14ぐらいでしょうか。

※画面左のオッサンの顔が、3分の1ほど削られている。

 日本版DVD

 

(発売元:パイオニア)

こちらは、レターボックスのスコープ・サイズ。しかし、輸入盤よりも横が広い。

アスペクト比は1:2.38ぐらい。

※画面左のオッサンの顔が全部フレームに収まっている

 日本版LD

(発売元:大映ビデオ)

何とLDは、もっと横が広かった! アスペクト比は1:2.43ぐらい。

※画面左のオッサンの顔だけでなく、体もほぼ全部収まっているし、右の窓の縦線も、上の2つに比べて数が多く映っているのが判る。

 

つまり、大映版LDが一番横幅が広く、端の端まで見えるという事になりますね。なので、LDを持っている人は、DVDを入手したからといって、なかなか手放せないのではないでしょうか。

取り敢えず、パイオニア盤DVDは、速攻で手放してイイでしょう。素晴らしいアンカーベイ盤を一度でも観てしまった以上、こんなショボいDVDは、二度と観たくありません! 以上!

 

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