これでいいのか!? DVD!

【第7回】

 

『墓地裏の家』

 

 

前回に続いてルチオ・フルチのホラー映画です。昨年の10月にリリースされた『ビヨンド』を始め、11月が『悪魔の墓場』、12月が『ゾンビ3』と、既にビデオやLDが廃盤になっていたゾンビ映画の名作(迷作もありますが…)のDVDが連続的にリリースされて、ゾンビ映画ファンにとってはまさに至福の時間が続いておりますが、その先陣を切って昨年の7月にリリースされたのがこの『墓地裏の家』です。

日本では、大映ビデオから出ていたビデオ&LD以来のメディア・ソフト化となる訳ですが、フルチのゾンビ映画の中では、比較的地味な作品であるのと、海外では既に色んなメーカーからリリースされている作品という事もあって、さほど話題にはならなかったようです。

元々、ビームエンターテインメントが、一昨年(2001年)の4月に『ビヨンド/デラックス版』をリリースする予定だったところ、権利に絡む問題があったとかでリリースが中止になり、ビームが新たにハピネットと改名してから、何とかリリースしたのが、もう1本のフルチ・ゾンビ映画であるこの作品だったのですが、実際にリリースされたこの作品は、何故か早回し版(PALマスターか…?)になっているもので、他のフルチ作品である『ビヨンド』や『サンゲリア』の日本盤DVDが、色々問題がありながらも、一応、正常な回転のオリジナル版でリリースされているのにも関わらず、何故この作品だけなのか、大いに疑問に思ったものでした。

因みに、以前日本でリリースされていた大映版LDのランニング・タイムは85分56秒で、今回の日本版DVDは、82分20秒。登場人物の喋るセリフが、多少、早口なのは勿論、バックに流れる哀愁を帯びた音楽も、サントラ盤と比較すると、やはりテンポが早く、音程も上がってしまっています。これは完全に早回し版の特長ですね。

しかし不思議なのは、特典映像であるスチル・ギャラリーが、アンカーベイ版のDVDに収録されているものをベースにしている(一部、画像が差し替えられているが、ラストに“アンカーベイ”のクレジットが出てくる)のに、何故本編仕様だけは、アンカーベイ盤(こちらは通常の回転である)とは別になっているのか…? という事だ。

また、アンカーベイ盤がスクイーズ方式によるスコープ・サイズなのに対して、この日本盤は非スクイーズ(レターボックス)のスコープ・サイズだし…。(尤も、前回取り上げた『ビヨンド』と違い、アスペクト比は、大映版とほぼ同じの1:2.35に近いものになっていましたが…)

おそらく、本編の権利と特典の権利が別という事なんだろうけど、何故そういう事になっているのか…。せっかくそこまでやるなら、本編もアンカーベイ盤と同じマスターを使ってくれれば良かったのに…と誰もが思う事でしょう。

ま、PAL版マスターの方が権利金が安かったんでしょうけど、『ビヨンド』のDVDが中止になったりと、ビーム(ハピネット)は、かなりヤバい橋を渡りながら商売しているような感じですなぁ。

それに関連した問題として、この『墓地裏の家』の初回リリース版で、ジャケット不具合という問題も起こりましたね。ジャケットに『墓地裏の家』とは関係ない映画の画像が使用されているという事でクレームが付き、メーカーが早々に回収したという、マニアの間では、ちょっと話題になった事件でした。

関係ない映画といっても、同じフルチ監督の『ビヨンド』の画像(磔処刑=リンチされたシュワイク・ゾンビのスチル)なので、全く関係ない事もないのですが…。しかし、その時点で既に、『ビヨンド』のDVD化権は、他のメーカーが持っていたので、それはやっぱり問題ですな。もし、最初の予定通り、ハピネットが『ビヨンド』の権利も持っていたら、そのままになっていたかも知れず、この辺りの権利に関する問題は色々ありそうです。

推測ですが、『ビヨンド』も『墓地裏の家』も、最初からハピネットがリリースする予定でいて、その時にジャケ・デザインもほぼ決められていたのかも知れません。で、『ビヨンド』の権利が消滅したにも関わらず、以前決定したジャケ・デザインで『墓地裏の家』をリリースしてしまった…と、いう事なのではないでしょうか…。

いずれにせよ、“ビヨンド・ジャケ”版は、回収されてしまった訳ですが、実は、ある所にはあるものです。先日、何気なく訪れた寂れたDVDショップで、その回収ジャケ・バージョンの『墓地裏の家』を発見、取り敢えず保護する事に致しました。

で、ジャケットを見比べてみたところ…

 

左が問題の“回収版”ジャケ。磔になっているのが『ビヨンド』のシュワイク氏。そして右が訂正版ジャケ。スチル写真の合成ではなくなり、基本的にはオランダのEC版ジャケと同じモノを使っている模様。

全体のデザインだけでなく、英語タイトルの字体や、色合いも違っているよう。

 

 

あと、背タイトルの部分も

ご丁寧に「ビヨンド」が使われていたせいで、やっぱり、変更されているようです。ここも英語タイトルの字体が変わっていますね。

 

あと、裏ジャケットですが、両者を比較したところ、全く変わりありませんでした。また、ケース内のスリーブやチャプター表、それにディスク表面(一応ピクチャー・ディスク?)にも違いがなく、表ジャケットと背ジャケットだけの変更だったようです。

ハピネットも、いきなり大変でしたね。っていうより、いい加減なDVDを出してるんじゃネェ! と声を大にして言いたいですね。大体、日本のDVDメーカーは、ホラー映画に関しては、全くマニアックな状態でリリースしようとしていないようで、この拘りの無さは、世界でも稀でしょう。ホラー映画に拘りを持ってDVDをリリースし続けるアメリカのアンカーベイが、ホント、羨ましいです。

これからも、ホラー映画の日本盤DVDには、要注意ですな!

 

 

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