これでイイのか!? DVD!

 

第1回 『ドラゴン怒りの鉄拳』

 

最近、そのあまりにものリリース・ラッシュに、ちょっと戸惑ってしまうぐらいの勢いがあるDVDソフト。今までのビデオ・ソフトやLDソフトに比べて、画質・音質は元より、画面サイズや音声仕様、そして数々の特典映像と、どれをとっても勝っているDVDソフト群。そして何よりも、そのリリース作品の凄さ。ビデオでリリースされていたものに加えて、長らく絶版になっていた作品や、「エ? こんなものまで…」と言えるような、珍しい作品までもがリリース、或いはリリース予定に入っているというのは、映画ファンにとってはとにかく嬉しいものですが、その反面、「どうしてこういう形でリリースされたのだろうか?」と疑問に思える作品も少なからず存在するのも事実で、このコーナーでは、自身で観て確認・チェックした作品に限り、「こんな状態でリリースしてイイのか!?」という真実の声を、みんなに伝えたいと思います。

という訳で、今回、第1回目に取り上げる作品が、もう説明不用、皆さんご存知の『ドラゴン怒りの鉄拳』(発売元・パイオニア)です。ブルース・リー主演の第2作目で、日本ではドラゴン・ブーム最高潮の74年7月20日、奇しくもブルース・リーの1周忌に公開された作品で、ファンの中には、これをブルース・リーの最高傑作に推す人も多い、かなり人気のある作品です。

 

以前(1985年)に、ポニーからビデオ&LDがリリースされていましたが、他のポニー作品(『ドラゴン危機一発』や『ドラゴンへの道』)が、90年代に入って、他メーカーから再リリースされていたにも関わらず、何故かこの作品だけは、ずっと絶版のままだったのですが(どうも権利関係の問題だったらしい…)、99年の夏に、やっと、DVDでリリースされました。既に他のブルース・リー映画は、全てDVDリリースされていたので、この作品のDVDリリースにより、ファンはやっと、全てのブルース・リー作品がDVDで観られる事になった訳で、実に嬉しかったものでした。

しかも、その発売仕様がなかなかのもので、まず、音声が、オリジナルの北京語と広東語に加えて、英語音声が全て5.1chのサラウンドで収録。字幕は、日本語、英語、北京語、広東語の他、マレーシア語、タイ語、ベトナム語、スペイン語と、全部で8カ国語の字幕が収録されていて、とにかくDVDの機能を活かした作品になっていました。

それに、特典映像として、ブルース・リーの各映画の予告編集を始め、この作品の原点となった、精武館の物語が字幕で説明されていたり(残念ながら英語のみ、ですが…)、第4の音声で、ドニー・イェンによる音声解説(これにも字幕が付いていないのが残念)が収録されていたり、そして最大の関心事は、あの、この時点ではまだ幻とされていた『死亡的遊戯』の未公開シーンが数分、収録されているのが、とにもかくにも最高!と、このDVDを手に入れた時は、みんな(僕だけか?)諸手を挙げて喜んだものでした。

勿論、DVDだけに、それまでのLDと比べても、画質は格段にキレイだし、音声も5.1chサラウンドというのも嬉しかったけど、劇場で公開された時以来の英語音声が聞ける(それまでのポニー版は広東語版だった)というのが、何とも嬉しく、東宝レコード(TAM盤)でスリ切れるほど聴いた、あの聞き慣れた英語音声が、このDVDで楽しめるというのが、もう何はともあれ、パイオニアさん、リリースしてくれてありがとう! と万歳三唱したものでした。ところが…

ところが…

ところが、なのです。これを入手した当時から気になっていたのですが、ランニング・タイムが、どうも様子がおかしいのです。ジャケット表示によると“102分”となっています。確かに、この映画の劇場での上映時間(ランニング・タイム)は、100分ぐらい(当時の資料による)だったので、一見、別におかしくはありません。しかし、先程も言ったように、85年にポニーからリリースされたビデオ&LDは、劇場ではカットされた(劇場へ観に来る少年たちへの影響を考慮に入れた為)「芸者ストリップ」のシーンが、ちゃんと収録されたオリジナル版でのリリースだった筈で、その時のランニング・タイムが、ジャケット表示によると“106分”でした。

さて、この違いを、一体どう解釈すればイイのでしょうか。実は、このDVDを購入する直前に、僕はそれまで所有していたこの映画のLDを、中古で売り払ってしまった為、今は手元にないのですが、もしかして、LDの表示が間違っていたのかも知れないと思ったりして、実に気になってしょうがなかったのでした。

で、実は、そのLD版を持っていた時期に計測した、実測値データがありまして、それによると、サイド1が53分22秒、サイド2が52分40秒で、合計:106分02秒となっていました。そうです。ジャケット表示の“106分”は、間違いではなかったのです。で、今回のDVDの実測値が、102分01秒でした。実質、4分も違うのです。今回のDVDの方が、今までのLD(ビデオも同バージョン)より4分短いのです。これは一体ドーいう訳なのでしょうか?

           

もう16年前にリリースされていたポニー版のビデオとLD(どちらも広東語音声による同バージョン)

 

で、今回、タマタマ、この映画のアメリカ製の中古盤LD(ジャケット表示は106分)を安く入手する事が出来たので参考までにランニング・タイムを計測してみると…、サイド1が48分26秒、サイド2が58分01秒で、合計106分27秒となっていました。これは…!?

ポニー版は、頭からゴールデン・ハーヴェストのタイトルから始まりますが、アメリカ版(発売元はCBS/FOX)は、その前に、映画の配給元であるコロムビア映画のマーク・タイトルが入るので、26秒の時間差は、それによるものと思われ、つまり、ポニー版もアメリカ版も共に“106分”というのが正解で、何故か日本版DVDだけは、“102分”だったのです。観たところ、例の“芸者ストリップ”のシーンも入っていたというのに…。

で、こうなったら、とことん解明してやろうと、ある実験を試みてみました。その輸入LDとDVDとを、同時に再生してみようというものです。もしかすると、今回の一件は、“あのせい”なのかも知れないと思い立ったからで、こうする事によって、その“あのせい”かどうか、判るからです。

で、その実験の結果は…?

                

苦労して入手した、アメリカ版LD

(勿論、英語版。画質は日本版より、なかなか良かったような…)

 

     

やっぱりそうでした。今回の4分の違いは、予測通り“あのせい”だったのです。“あのせい”とは、つまり、俗に云う“早回し”です。映画のフィルムは1秒間に24コマの早さで動きます。ところが、ちょっと映写機の回転を早めて、1秒間に25秒の早さで動かすと、24/25、つまり、1秒間に1/25秒、1分間に1/25分、もっと端的に言えば、25分につき1分ずつ早くなる計算になり、たとえば1時間40分(100分)の映画ですと、1時間36分(96分)の上映時間になってしまいます。これがいわゆる“早回し”です。

ビデオ・ブームの初期の頃には、この“早回し版”のビデオが日本でも出回りました。元々はアメリカでのリリース時に、ランニング・タイムの長い映画を、規定の120分テープに何とか収める為に取られた苦肉の策だったようで、『スーパーマン』や『ワイルドバンチ』の初期版テープ(共にワーナー)は、120分テープぎりぎりに、この早回し版で収録され、リリースされていました。他には初期の『スター・ウォーズ』と『帝国の逆襲』のLDが、やはり1枚に収める為に、一部(全部ではなく)早回しされていた事がありました。

で、日本の場合は、そういう意図とは別に、例えばイギリスに本社を持つソーンEMI(キング・ビデオ)からリリースされていたビデオやLDは、ほとんどが“早回し版”でリリースされていました。何故かというと、イギリスなどのヨーロッパ諸国は、日本やアメリカのNTSC方式とは違う、PALやSECOMのテレビ方式になっていて、アチラでは、映画のフィルムからビデオに転換する時には、その方式に合わせる為に、わざわざ1コマ25秒の早回しで転換しなければならないのでした。(通常の1秒24コマのスピードでは、転換できない=画面が映らないから…)

で、その早回し版のマスター・テープが、日本でのビデオ化時に、アチラから送られてきて、それでそのまま日本版を作成すると、自然に早回し版のソフトが出来上がるという寸法で、その社の『戦争のはらわた』『炎の少女チャーリー』『スーパーマンV/電子の要塞』『コナン・ザ・グレート』…など、ほとんどの作品がオリジナルから少し時間が短い“早回し版”でリリースされていた訳でした。その他、何故か初期のワーナー作品『探偵マイク・ハマー/俺が掟だ!』『タワーリング・インフェルノ』『007/ゴールドフィンガー』『007/死ぬのは奴らだ』『007/黄金銃を持つ男』『ビッグウエンズデー』『マッドマックス1&2』『宇宙の7人』…なども同じように“早回し版”でリリースされていて、多分これは、ヨーロッパでのリリース用のマスターが、日本に送られてきた為だと思われるのですが、当時はそんな事を指摘する人は、一部のマニア(僕、含む)を除いて、誰もいないというのが現状でした。

話はちょっと横道に逸れましたが、今回取り上げた『ドラゴン怒りの鉄拳』のDVDのランニング・タイムの謎は、これで解けました。結局は、“早回し版”だったんですネ、このDVD。LDと比較して判ったのですが、早く回っている分、音声が半音ほど高くなっているのも判ります。当然、セリフを喋る早さも早いですし、音楽も早くなっています。ウ〜ン…。

ナンか、気持ち悪いですネ。時間が短いっていうのもそうですが、早く回っていると思うと、ナンか、早送りで映画を観ているような気分になる(知らなければ、別に気になりませんが…)もので、居心地が悪いというか、気分が悪いというか…。

しかし、何故、このような形でDVD化されたのか、それが全く解せません。元になっているのは、香港の“メディア・アジア”というメーカーのもので、香港版も、この日本版と全く同じ仕様(ジャケットも)でリリースされているようですが、それも同じく“早回し版”なのか、そこまでは判りませんでした。

まぁ、発売元のパイオニアとしては、香港から取り寄せたマスターそのままにDVD化したのでしょうから、元々そうなっていたと思うのが妥当でしょうけど、しかし、よ〜くチェックすれば判る事だとは思うのですがネ〜。大体、ランニング・タイムが違うという時点で気付いても良さそうなものですが、その辺りのメーカーの怠慢さっていうのは、いつの時代でも変わらないものだナ〜と痛感、というか、呆れてしまいました。

この夏には、この作品の広東語オリジナル版(同じくパイオニア)が、またリリースされるようですが、そのバージョンがどうなっているかは、今の所分かりません。出来れば、“オリジナル”っていうぐらいですから、元の通常のスピード版にてリリースして欲しいものですが、しかし、先にコッチを買った我々は、一体ド〜なるのか! パイオニアに告ぐ、前バージョンを買った人には無償で、オリジナル版と交換せよ! と、声を大にして言ってみたいものです。

 

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