これでイイのか!? DVD!

第8回

ある日どこかで

 

  

 

さて今回取り上げるのは、この11月に晴れて日本でもDVD化された永遠の名作『ある日どこかで』です。日本では1981年1月に1週間だけ公開(限定公開とかではなく、不入りの為、上映が打ち止めになった…)された不遇な作品で、その劇場公開で観た人はごく僅かな人数で、その僅かな人が全員「素晴らしい!」と絶賛。また、当時のラジオでも、あのユーミンが、「とてもよかった」と声を上げた為に、ジワジワと噂だけが浸透していた、半ば幻扱いされていた作品だった所、80年代中盤にビデオ・リリースされた事によって、その実物を確認した人が、これまた全員「素晴らしい!」と絶賛、遂に名作映画の1本に数えられる事になった、曰く付きの作品であります。

ビデオが密かなベストセラーになり、LDも発売、サントラ盤も2種類リリースされて、リチャード・マシスンの原作も発売、さて残りはDVD…といった段階で、なかなかリリースされなかった1本でしたが、遂にここに来て特別版(ジャケットには謳われていませんが、映像特典が1時間以上+音声解説も収録されているので、ほぼ特別版と言ってもイイでしょう)でリリース。まさにファンにとっては、至福の瞬間を迎えた…というところであったのに、それが…。

まずは仕様をご覧下さい。

 

上記のようになっております。音声はモノラルなのはしょうがないにしろ(オリジナルは確かにモノラルで、まぁ、DVD化されるには、せめて5.1chにリミックスして欲しかった気もしますが…)、その代わりと言っちゃあナンですが、日本語音声も入っている(しかも新録!)ので、取り敢えずヨシとするものの、画面サイズが4:3の非スクイーズによるヴィスタ・サイズというのがちょっと問題に。

僕は、実は、あまりスクイーズ方式には拘らない方で、取り敢えずオリジナル通りのスコープやヴィスタのワイド画面で観れればイイ方なんです(どちらかというと、音声に拘る方なんで…)。なので、スクイーズになっていない事に関しては、あまり文句は言わないんですが、しかし、今回のこのDVDの場合、スクイーズになっていない事による弊害が出てしまっているんですよね、マッタク!

その弊害とは…!? 字幕位置が、画面外、つまり、ヴィスタ・サイズの黒味部分に設定されている為、ワイド・モード(シネマモード)にした時に、字幕が画面外にハミ出してしまい、読めない(!)という事なのであります。これはもう致命的欠陥でしょう!!!!!!! 

取り敢えず下の画像を見て頂きたいのですが、

 

 

これが通常の画面になっています。いわゆる、普通のテレビ・サイズで再生した時の画面です。

2行に字幕が出てきた時は、1行目は画面内、2行目は画面外(黒味部分)に表示される訳ですね。

 

それをワイド・モード(ワイドテレビのシネマモード=画面の上下左右を拡大して表示する機能ですな)で再生すると、当然ながらご覧のような結果になる訳です。つまり、字幕が1行目しか見えない訳ですな。

で、字幕が一行だけの時は、黒味部分に表示されるので…

それをワイドモードで再生すると、このように、字幕が全く見えない状態になってしまう訳なのです。

ナンという事か…。

 

 

本来なら、スクイーズ方式で収録されていれば、こういう問題は起こらなかった訳です。スクイーズ方式の場合で画面サイズがヴィスタの時は、字幕は完全に画面内に収められるからです。しかし、このDVDはスクイーズ方式でなく、普通のレターボックスなんですな。スコープ・サイズなら、まだ下に黒味部分が残るので、黒味に字幕が表示されても、何とか読みとれる(※)訳ですが、ヴィスタの場合は、黒味部分が全く無くなってしまうので、今回のような字幕表示だと、当然ながら、ワイドモードにした時に字幕が見えないという問題が起こってしまうんですね。

 

スコープ・サイズのレターボックス収録の場合、2行全部が黒味部分に字幕が表示されいても、2行目が見えない時があります。今回、『ある日どこかで』と同時に買った『荒野のストレンジャー』がそうで、これも非スクイーズ、つまりレターボックスのワイド(スコープ)になっていて、字幕が全て黒味部分に表示されているんですが、普通に1行だけの時は、ワイドモードでも問題なく字幕が見えるけど、2行になった時の2行目は、半分ぐらい字幕が切れていました。ナンだかなぁ〜。(それを回避する為には、画面の垂直位置を上げてやらなければなりませんが、ヘタすると、それでも2行目が見えない時があります…)

 

本編が非スクイーズなのにも関わらず、オープニング画面やメニュー画面等は、何故かスクイーズ方式で収録されています。何故だぁ〜! こういう画面がスクイーズの時は、本編もスクイーズの筈なのでは…!?

 

そのメニュー画面をフルモード(左右を拡大して16:9画面にするヤツ)で再生すると、このように正常な画面になる訳ですが…(当たり前ですね…)。メニューがそうなっていても本編がそうなっていないのはねぇ…。

 

因みに、本編をフルモードで再生すると、このようになります。字幕は見えますが、当然、横長(&ズン胴)ですな、トホホ…。

 

だからといって、ワイドモードで字幕位置を変更する機能(画面下方を縦方向に圧縮して、字幕を表示しようとする機能)を使ったとしても、ご覧のように、字幕は見えるようになりますが、画面下部分が、縦に圧縮されて、短足や胴短になってしまいます。これは、オリジナル画面が汚されるという意味でも、あまり使いたくない機能ですね。(なるべく画面が圧縮されないようにと、画面の垂直位置を変更できるのですが、あまり上に上げると、今度は画面の上が切れてしまう事になります)

 

もうひとつ因みに、以前リリースされていたLD版の画面は、スタンダード収録なので、このようなスッキリした形になっとります。実に自然な感じですなぁ。

で、思ったんですが…

 

DVD版=ヴィスタ・サイズ LD版=スタンダード・サイズ

こうして、同じ画面でDVD版(左)とLD版(右)の画角を比較すると、明らかに違う事がわかりますね。つまり、右側(LD)のスタンダード・サイズがオリジナルの画面サイズで、その上下、というか、ほぼ下方だけトリミングしたのが左側のヴィスタ・サイズ(DVD)版になる訳ですな。(普通は上下をトリミングする場合が多いのに、この作品の場合は下方だけのようです)

ま、80年代以降の、マスキング・ヴィスタの典型的な撮影&上映手法でして、この事は別に珍しい事ではないんですが、今回の字幕問題と併せて考えると、左の画像が特に窮屈な印象を受けますね。字幕の位置をよ〜く見ると、まさしく、右の画像の字幕の1行目の下からバッサリ切っているようになっている訳で、実に不自然な画角になってますな。

 

まぁこれも偏に、このDVDがスクイーズ方式で無かった事に起因する今回の問題だった訳ですが、非スクイーズなら非スクイーズで、字幕を画面内に表示する事は出来なかったものなのか…。これはメーカーの致命的な欠陥だった事は否めない事実ですね。

 

一応、上記のように、日本語吹き替え音声も収録されているので、スッキリした画面で楽しみたいなら、画面をワイドモードでヴィスタ・サイズにして、音声を日本語で聴く…という事で、それは満たされる訳ですが、肝心の字幕スーパーで普通に楽しめないのは、やっぱり残念でなりませんね。

結局、僕は諦めて吹き替え音声で観賞しましたが、まあ、吹き替え音声も、どうやら新録のようで、声優のイメージもピッタリ合っていたので、これはこれで良かったですが…。

 

しかし、せっかくこのような特典までちゃんと収録されてあるDVD(北米盤と同じ仕様なのには拍手!)なのに、今回の字幕問題は、かなり痛いです。音声解説に字幕が付いているのは勿論ですが(最近、付いていないDVDもあったとか…)、予告編にも字幕が付いているのには驚きでした。普通、DVDに収録されてある予告編には、オリジナル版そのままを収録してあるだけなので、日本語字幕は付いていない場合が多いのですが、この作品の場合、わざわざ付けられてあるのには感心しました。しかし、そこまで字幕に拘るのなら、本編の字幕位置にも拘って欲しかったですね。

とにかく、僕にとっては永遠の名作の1本(オールタイムのベスト3に位置する映画)でして、DVDの高画質・高仕様の状態で観るのを楽しみにしていたにも関わらず、いさ発売されたらこんな状態とは、ホント、鬱な気分になってしまいます。こうなってしまったのには、当然理由がある訳ですが、そんなメーカーの思惑も、全く分からないまま、こうしてババだけを掴まされるユーザーは、ホント、バカにされてますなぁ。

これと同時期にリリースされた作品でも、『アンドロメダ…』(ユニバーサル)の特典映像に字幕が収録されていなかったり、『大空港』(ユニバーサル)がPALマスターの早回し版の上モノラル音声だったりと、不甲斐ない仕様のDVDが相変わらずリリースされてまして、いくら値段が安くなったとはいえ、こういう不完全な仕様でリリースするのはヤメて欲しいものです。

来る2004年も、話題作や名作、幻の逸品のリリースが目地押しのようで、出来れば、今後は、不満のある形でのリリースは、しないで欲しいものですなぁ〜。ハァ〜…。

 

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