超無責任!超不謹慎!

五体不満足映画10連発

 

今回の10連発は、「五体不満足映画」特集。

最近のテレビの放送コードでは、「五体満足」という言葉も差別表現に当たるとして、

放送禁止用語になっているとか。

だからドラマ等で、「五体満足に生まれてきて…云々」というセリフはダメで、

古いドラマの再放送の場合は、そのセリフの部分だけカットされていたり、

或いは、その種のドラマ自体が放映されなかったりしています。

で、ちょっと前に「五体不満足」という本がベストセラーになっていましたが、

アレは、実際の障害者の人が書いた本だったからOKだった訳で、

健常者の人が「五体満足」って言えばNGというのは、

これはどう解釈すればイイのか?

という訳で、今回は、そんな問題提起とは全く関係なく、勝手にやっちゃいます。

不謹慎と思われても結構。というより、別に差別しようなんて意志は、全然ありませんから。

 

★某月某日午後7時00分

 事情があって1時間遅れてしまった。ヤレヤレ。とにかく始めなきゃ、と思ったら、ちょっと前から来ていた弟が、まだ帰らずに家にいる。しかも部屋まで入ってきた。「今日は今から、明日の昼までビデオで映画観なアカンよって、早く帰れヨ!」って言ったら、「エエやん、僕も付き合うワ」との事。しょうがない。どうせ途中でダウンするだろうし、ま、イイか、という事で、まずは1本目。

 本日の1本目は、この手の映画のルーツ的名作『フリークス/神の子ら』(32)。

                        

 いやぁ、これは傑作。とにかく、本物のフリークスさんたちが、多数出演していて、初めて観た時は、ビックリしました。一緒に観ていた弟も、芋虫男(両手の無い人)が足で煙草を吸うシーンを観て、「コイツら凄い!」と言ってましたが、コイツら呼ばわりはいけませんヨ。失礼にも程があります。この人たちだって、しっかり生きているんだナーと、僕も新たな感動に包まれました。

 しかし、内容が内容だけに、日本でもよくビデオ化出来たナーと思います。アメリカでも初公開後に物議を醸し、それ以後はズタズタにカットされた短縮版しか存在しなかったらしく、当然、我が国でも未公開だったもので、一時、自主上映会なんかで、16ミリ・フィルムが『怪物団』というタイトルでヒッソリと上映されたりしていました。これを天下のMGMが作っていたというのも、今から思うと凄いと思います。

 監督のトッド・ブラウニングは、『魔人ドラキュラ』の人だけど、これを怪奇映画として作ったのかナーと当初は思っていたのですが、何でも元々はサーカス出身の人らしく、これ以外にも、この手のフリークス映画を撮っているとかで、まぁようするに、本当にフリークスの人たちに愛情を感じている人なんでしょう。でなければ、こんな映画作れないと思います。

 

★午後8時20分

 続く2本目は、『フリークス』同様、サーカスを舞台にしたシーンが出てくる、これも名作『エレファント・マン』(80)です。

               

 1980年の、“国際障害年”(?)の年に公開された感動の名作ですが、今となっては、デイヴィッド・リンチ監督の中でも、番外編的な作品に位置づけられています。まぁ、その後の『ブルー・ベルベット』や『デューン/砂の惑星』、そしてテレビの『ツイン・ピークス』なんかを観れば、彼がどのような視点でこの映画を撮っていたのかという事が分かりますが、とにかく我々の目に最初に触れた時は、“感動の名作”扱いでした。

 まぁ確かに、泣ける映画ではありますが、それよりもやはり、中盤に登場するサーカスのシーンが重要でしょう。ここでも本物のフリークスさんたちが集められていて、まるで『フリークス』にオマージュを捧げているような感じになっています。

 観ていた弟は、ラスト・シーン近くになると、「ちょっとトイレに行って来る」と言って部屋を出ていきましたが、もしかして泣いていたんでしょうか。お陰で僕も、一人で涙を流す事が出来、助かリました。何度も観ていた映画ですが、やっぱり泣けちゃいますネ。死んでしまうから泣けるんではなく、周りの偽善者たちに振り回されている主人公が可愛そうだからで、やっと安らぎを得られたんだと思います。その偽善者の一人に扮していたアンソニー・ホプキンスは、この10年後にはレクター博士になっちゃう訳ですが、まだこの頃は、普通の演技をしていて、今観ると面白かったです。

 因みに、本物のエレファント・マン、ジョン・メリックさんの写真を入手しました。映画がいかに、忠実に作られているか、よく分かると思います。

                          

              ジョン・メリックさん         メリックさんの全裸写真      死後、研究の為に残された頭蓋骨

 

★午後10時35分

 続いての3本目は、これも『フリークス』にオマージュを捧げた、というより、それをリメイクしたかのような怪作『悪魔の植物人間』(74)です。

                   

 コチラは正真正銘、ホラー映画として作られています。この種のゲテモノ・ホラーにはよく顔を見せているドナルド・プリーゼンスが、マッド・サイエンティストに扮して、人間と植物とを合体させる実験をしていますが、失敗した人たちを、みんな近くのサーカスの見せ物小屋や売ってしまうというのが面白いです。で、そのサーカスにいる人たちが、これまた本物のフリークスさんたちばかりでして、外国のサーカスには必ず、この手の見せ物小屋があるというのが、ちょっと羨ましいと思いました。

 ここにも色んなフリークスがいますが、一番印象的だったのは、目玉をグルグル回す黒人さん。フリークスというより、一種の芸みたいなんですが、実はこの人、愛川金也が司会していた「世界ビックリ人間大集合」みたいなテレビ番組に、やっぱり、その芸で出演していました。ところが、そのちょっと前に深夜に放映されいたこの映画では、何とそのシーンがカットされていて、理不尽に思いました。ホラー映画としてはイケナイけど、テレビ番組の芸としてならOKって、よく分かりませんでした。

 因みに、最近は黒人の女の人が、よくこの芸をやっているのを見掛けますが、やっぱり、フリークスというより、芸人でしょうネー、この人たちは。でも、目が飛び出してくるのは、やつぱり気持ち悪いです。

 という訳で、そういう逸話を、観ながら弟に話してやったら、3本目にして食傷気味になっているようでした。そりゃあ、何の覚悟もナシで、いきなり3本強烈なのを観せられては、タマったもんじゃないと思います。

 

※途中退場したい人はコチラから

 

★午前0時05分

 弟がもう帰るというんで、「夜食でも食って、もう1本ぐらい観ていけば?」と薦めてやったら、一応踏み止まったようです。別に帰って貰ってもイイんですが、まぁ、一人だと寂しい(?)っていう事もありますし、取り敢えずここで夜食&休憩タイム。

 「兄貴、こんな映画ばっかり、いつも観てて、おかしくなれヘンか〜?」と、ラーメンを食べている弟に聞かれましたが、「毎回・毎回、こんなヤツばかりじゃない。いつもは、感動の名作ばっかり観てるでぇ」と、言ってやりましたが、僕の部屋の棚に並べてあるビデオを眺めていた弟は、「フーン」とか言って、全然信用していないようでした。何故ならそこには、『悪魔の生体実験』とか、『怪奇!吸血人間スネーク』とか、『燃える昆虫軍団』なんかのタイトルが並んでいたからで、コリャしまったと思ったけど、もう遅かったみたいです。

 

★午前0時30分

 気を取り直して次に行きます。今度はガラっと趣向を変えて、香港製のクンフー・アクション映画とまいります。といっても、今回のテーマがテーマですから、普通のものじゃありません。これも知る人ゾ知る『阿修羅/ミラクル・カンフー』(81)です。

                      

 取り敢えず、帰ろうとしていた弟を引き留めたのは、どうしてもこの映画を観せたかったから。パッケージ等は何も見せずに、予備知識を与えないで観始めたのでしたが、最初の方は単なる香港製クンフー映画と変わらないような雰囲気なので、弟も大して乗る気じゃなかったみたいですが、主人公の一人が両腕を切り落とされた辺りから、画面を見つめ始めました。

 両腕が無い人(根っこが少しだけ残っている)が、起用に水を汲んだりしているのを見て、「これって本物?」と問いかける弟を尻目に、今度はもう一人の主人公の足が硫酸で溶かされて、足ナシになっちゃうシーンが展開。で、その手ナシと足ナシ(正確には、ゴボウのような足が生えているので、足萎えと言うべきか)が、最初は敵対していたのに、洞窟で籠に入っていた軟体人間のオヤジの説得を受け、二人力を合わせて、そんな姿にされてしまった憎い敵をやっつけようという事になるこのストーリーには、戸惑う弟の度肝を、完全に抜いてしまったようでした。

 それにしてもこの映画、ミラクル・カンフーとはよく言ったもので、主人公が手ナシと足萎えなら、その師匠が軟体オヤジで、相手の敵が、これまた顔がケロイド状になっている背中がセムシ男という、登場人物のほとんどが、この種の人たちという、まさに“ミラクルな”世界。で、じゃあ『阿修羅』とはどういう事なのかというと、手ナシが足萎えを背中にオブって、つまり、合体した形で敵に立ち向かっていくという作戦を展開する訳で、その形が阿修羅のようだと、多分、そういう意味で付けられたタイトルだとは思え、いやはや、凄いです。

 

★午前2時15分

 『阿修羅/ミラクル・カンフー』があまりに弟に大受けだったので、次は予定を変更して、そのパート2を上映する事になった。最初の予定では、ホロドフスキー監督の『エル・トポ』だったんだけど、弟が観るには、ああいう映画よりも、単純に五体不満足が楽しめる(?)映画の方がイイだろうと思ったからで、帰ろうとしていた弟も、もう1本ぐらいだったら、付き合ってもいいというような事を言っていた。

              

 で、観たのが、『ミラクル・カンフー2/激闘篇』(83)で、前作がちゃんと日本で公開されていたのに対し、コチラは未公開の上、ビデオも出ていない。つまり、今回観たのはアメリカ製輸入ビデオで、という事になり当然字幕スーパは付いていません。そのせいか、弟にはかなり辛かったようで…。

 お話は、前作とは全く関係なく、時代設定も現代になっていますが、やってる事はほとんど同じです。もう2作目なんだから、前置きは要らないとばかり、今回は開早々いきなり、手ナシ足萎えの二人が取っ組み合いの喧嘩をおっ始める所からスタート。で、どういう訳か、二人で暮らし始める事になり、一匹の猿(勿論猿回し用)と共に、仲良くしていると、そこへ、男に傷つけられ、その為に失明してしまった女の人が現れて、カワイそうとばかりに、家に泊めてやってからは、3人と一匹の生活が始まるほのぼのとしたムードが展開。手ナシ・足萎えに加えて、今回は盲目に猿という、奇妙な四角関係が芽生えています。

 で、平和な生活をしている所に、先程の彼女をメクラにした男たちが乱入。猿を殺されてしまった彼等は、その悪人共に復讐するというのがクライマックス。っていうか、その辺りは前作でネタを出し尽くしてしまっているので、何となく同じようなシーンが展開するのか難と言えば難で、フト横を見ると、腹がいっぱいになって気持ちよくなったのか、或いは、字幕の無い映画に飽き飽きしてしまったのか、弟がスヤスヤと眠っているのを発見。映画も終わってしまいました。

 

★午前3時50分

 気持ちよさそうに眠っている弟を揺り起こす。いきなりビックリして目を覚ました弟は、立ち上がるなり「もう帰るワ。明日早いし」の一言。こんな時間に、と思いながらも、やっぱりコイツもまだまだ青二才だと、内心ホッとし、「そうか。帰るんか。それやったら気イ付けて帰りや」と、とっとと送り出してしまった。まぁ、家はそんなに遠くはないし、男だし、という事だったのだが、「明日早い」って、今頃帰って大丈夫なのかと、ソッチの方を心配してしまった。

 

★午前4時00分

  で、次です。予定ではホドロスキーの『サンタ・サングレ/聖なる血』だったのですが、もうこうなったら、とことんあの二人に付き合ってやろうという事で、またまた予定変更。今度はシリーズ第3弾『ミラクル・カンフー3/闘いの日々』(製作年不明)です。

                    

 これもまた未公開作品な訳で、邦題は勝手に付けました。原題が“Fighting Life”ってなってたので、こういう風に付けたのですが、今回は、色々な意味での“闘い”が描かれます。というのも、今回は何と、普通の人情喜劇になってしまっているのです。主人公の手ナシ・足萎えコンビは、一応兄弟という設定で、他の家族と一緒に楽しい日々を送っているのですが、なにせフリークス(というか、彼等の場合はクリップル)なもんで、健常人から差別しまくられるというのが今回のポイント。そう、より一層、リアルなドラマになっている訳で、その差別から、いかに立ち直るか、いかに生活権を勝ち取るかという、根性ドラマ風なストーリーになっていました。

 だから、前作・前々作にあったような、復讐を賭けたクンフー・アクションという形は陰を潜め、どちらかというと、『男はつらいよ』風喜劇になっていて、アクションを期待した向きには肩透かしを食らいますが、彼等が周りからいかに差別を受けているかという実体(?)がよく理解できて、ヘンな意味でのリアリティがありました。

 しかし、3本目ともなると、彼等のクリップル性が、普通に見えてくるから恐ろしいもの。親しみさえ感じてしまったのですが、事実、彼等って、愛嬌があってカワイイです。

 

※途中退場したい人はコチラから

 

★5時35分

 ウーン、2本連続しての字幕ナシっていうのは、かなりシンドいです。弟じゃないけど、コッチもかなり眠くなってきました。取り敢えず眠気覚ましにシャワーを浴びて、そしてちょっとばかり早い朝食を摂る為に、ここらで休憩タイム。

 

★午前6時00分

 さて、目も覚めた(まだちょっと眠いけど)ところで、次いきます。7本目は、今回唯一の日本映画です。ベテラン松山善三監督の『典子は、今』(81)。助かりました。字幕スーパー読まなくてイイので、楽です。

                        

 典子さん(当時19歳)は、生まれながらにして両腕が退化したサリドマイド病患者。その、手ナシの彼女が、涙ぐましい努力の結果、見事、市役所の就職試験を合格するのを中心に、彼女の私生活を密着描写した、セミ・ドキュメンタリー作品。いやぁ、今までの映画が汚れて見えるぐらい、美しく感動的に描かれたドラマが涙を誘う、と思いきや、案外サラっとしたもんです。

 別段、彼女に同情する訳でもなく、どちらかというと、ちょっと突き放して描いている点が、却ってヤラセ臭いですが、しかし、典子さんの素晴らしい足技(なんせ手が無いもんで、全ての事を足でやらなくてはならないから)が何とも見事で、ミシンで縫ったり、紙に字を書いたり、ご飯を食ったりと、いゃあ、不謹慎覚悟で言わせてもらうなら、まさに、ヘタな見せ物なんか比べ物にならないぐらい、見事な足芸だと思いました。

 後半は、市役所勤務の夢が叶った彼女が、それまで楽しみにしていた、一人旅へ出るのを克明に追っています。電車に乗って旅する訳ですが、切符一つ買うのにも、他のお客さんに頼らなくてはならず、電車に乗ったら乗ったで、いざ弁当を食べようとすると(勿論、足で)、やっぱり、隣の乗客の手を借りなくてはならない等、この辺りは、他の人に迷惑かけまくる彼女の横暴さ(?)がいっぱい描かれていまして、「そんなに迷惑かけてまでも、一人旅がしたいか!」と、素朴な疑問に駆られる事必至です。

 というか、周りの人たちの暖かさの方に、感心してしまう訳ですが、これって、やっぱり、カメラが前にあるから、そうなってしまうんじゃないかと思いまして、もしそうじゃなかったら、どうなっていたか、よく分かりません。駅のホームや階段から転げ落ちたりするんじゃないかと思い、やっぱりこの辺は、映画ですネって感じがしましたです。

 

★午前8時00分

 続いては、これは有名どころ『ケニー』(87)です。ビデオは日本語吹き替え版だったので、これも楽に観れて

助かりました。

              

 もう、この映画に関しては説明不要でしょう。実際に日本にも何度か来た事もありますし。最近も、「あの人は今!?」なんていう、テレビ番組にも成人になったケニー君が出演したりしていましたから、言ってみれば、日本で(世界で)一番有名な現役のフリークス少年という事になるんでしょう。

 この映画は、『典子は、今』同様、そんな彼の日常を追ったものですが、唯一の違いは、こちらが完全なドラマ仕立てになっているところでしょうか。アメリカにはよくある、ニュー・ファミリーっぽい感じの暖かい家族に見守られて、それでいて、普通の人と同じような境遇・待遇として育てられているという点が、ある意味素晴らしく、かつ、驚いてしまう点です。

 登場人物の誰一人として、ケニー君を足ナシのクリップルだと言う人がおらず、その点は観ていて清々しい気分になれました。つまり、いくら足が無くても、決してそういう目では見ないという、アメリカ(外国はみんなそうなのか?)の現状を垣間見たようで、日本とはエラい違いだナーと思いました。

 とにかく、こんなケニー君でも、ちゃんと大人になって、そして、結婚まで出来てしまうんですから、その人生の素晴らしい生き方には、感動させられてしまいますネ。

 

★午前9時45分

 さて、いよいよ佳境に入ってまいりました。『典子は、今』『ケニー』と、2本続けて感動作が続いた次は、また

またアブないホラーの世界に入っていきましょう。9本目は『センチネル』(75)です。

                

 1976年に日本でも公開されたアメリカ製の、オカルト・ホラーです。あるアパートの一室を借りたファッションモデルの女性が、そのアパートに棲む、ただならぬ者たちに、恐ろしい目に遭わされるというストーリーで、舞台はニューヨークにあるゴシック調の古い建物という事もあり、かなりリアルな恐さで迫ってきます。実際、中盤のあるシーンでは、毎回観る度に、「ギャッー!」と声を上げてしまいそうになりまして、こんなに恐いホラー映画も、珍しいと思います。最近のように、特殊メイクやSFXに頼ったり、笑いで逃げたりせずに、本格的な恐さで勝負している点が、昨今のナマクラ・ホラーと一線を画しているところだと思ったもんです。

 で、肝心のフリークスさんたちは、一体何処に登場しているのかと言うと、これが何と、ラスト10分だけ。詳しいストーリーは省きますが、色々あってのクライマックス、主人公を脅かす、地獄からの使者たちという役で、特殊メイクを施されて大挙、登場してきます。いや、中には特殊メイクを必要とせず、そのまんま(!)のお姿で出てきているフリークスさんもいるのですが、しかし、寄りによって、地獄の使者=怪物の役とは!

 多分、アメリカで実際に活躍(?)していらっしゃるフリークスさんたちが召集されて、この映画に出たんだと思いますが、当然、どんな役かは知っての事だと思い、それでも快くOKして怪物役になっているのは、いやぁ、その心の了見の広さに、脱帽してしまいます。

 そういうシーンがある為か、日本ではこの映画、未だにビデオが出ていません。だから今回は、輸入ビデオで観たのですが、メジャーのユニヴァーサル映画が作っているにも関わらず、という事は、やっぱり我が国では、この手の映画がダメって事なのでしょうけど、しかし、感動的に描いた映画はOKで、ホラー映画だったらダメっていうのは、これはこれで差別的ではないでしょうか。どちらも、フリークスさんたちにとっては、自分に自信を持つ事が出来る映像だと思う訳ですが、やっぱり、それを健常人である僕たちが言うと、ダメなんでしょうかネー。

 因みにこの映画、低予算のホラー映画にしては、出演陣が驚く程豪華なのにもビックリしてしまいます。まだ無名だったクリストファー・ウォーケンやトム・ベレンジャーなんかもチラっと出ていて、今観ると別な意味で結構レアな感じがして面白いです。そういう豪華スターの共演って事で売れば、ビデオも出せるのではないでしょうか。もし、ビデオが出た暁には、ユニバーサル・スタジオにも“センチネル館”なんか作ってもらって、そこで本物のフリークスさんたちに頑張って働いてもらえば、日本の意識もちょっとは変わるんではないかと、そう思うのは、やっぱり僕だけでしょうか。

 

★午前11時30分

 いよいよオーラスです。軽い昼食なんかを食べながらいきましょう。ラストを飾るのは、今までとガラリと趣を変

えて、完全なるドキュメンタリー『ビィーング・ディファレント/素晴らしき生命たち』(81)です。

                

 世界中から集められたフリークスさんたちの実体を描いた、正真正銘のドキュメンタリー作品です。今までの『フリークス』や『悪魔の植物人間』なんかに登場した、本物の皆さんが、明るい笑顔で登場しています。といっても、同じ人たちではありませんが。

 ケニー君のような足の無い人。典子さんのような手の無い人を始め、手がカニのようになっている人や、大女と小人のカップル、そして、顔の半分がエレファント・マンのようになっちゃってる人など、もうありとあらゆる本物のフリークスさんたちが、大挙出演。さながらオールスター戦を観ているようでした。

 中でも顔半分エレファントさん。左側から見れば普通なのですが、反対側からみれば、そりゃあもう恐ろしい、なんて事を言うと失礼ですが、ホント、そのままノー・メイクで『エレファント・マン』に出られるんじゃないかと思うぐらいで、と、思っていたら、何とこの人、先程の『センチネル』に、しかもノー・メイクで出ていたんですよネ。勿論、地獄の怪物の役で。日本人からしたら考えられない事ですが、本人が喜んでやっているんですから、しょうがないでしょう。って、別に本人に聞いた訳ではないですが、でも、そういう事でしょう。この映画の中でも、普段は近所の人から、顔がちょっとだけ肥大しているオジサンとして親しまれているようで、本人なんかそのままの素顔(?)で、自転車に乗って町を闊歩しているぐらいですから、凄いもんです。

 後、これは凄い! と思ってしまったのが、典子さんのように手が無い女の人が、娘を連れてジーパン屋さんでジーパンを買うところ。娘さんは普通の人なので何も心配要りませんが、お母さんは手が無いので、いざジーパンを試着しようとして、さぁ、どうやって履くんだろうと思っていたら、これが凄いの何のって。針金のハンガーを上手く利用して見事にスパっと履いちゃうんです。ビックリしました。手がある人でも、あそこまで見事に履けないんじゃないかと思ってしまう訳で、いやぁ、感動してしまいました。

 他にも、ケニー君みたいな人が、カップルでプールでスイスイ泳いでいたりと、我々には想像もつかないような仰天シーンが続出し、この人たちこそ、本当に人生を楽しんでいる。それに引き替え、我々はどうだ。五体満足だからといっても、普段は何も努力しようとせず、ただ、流れに任せてノホホンと生きているだけ。しかも、悪い事をするのは、決まって健常人である。つまり、彼等こそが、本当に正常な人間で、我々の方が、心のフリークスなんじゃないかと、まるでデイヴィッド・リンチ監督のようなメッセージを感じ取る事が出来、束の間の心の洗濯をしたような気分なりました。以上。

 

★午後1時05分

 今日も全てが終了しました。ふと窓から外を見ると、雨が降ってるようです。この雨が、僕たちの心の汚れや歪み、そして澱んだ考え方も、全て洗い流してくれているようで、何かスカっとした気分になりましたが、横になったと同時に、そのままいつの間にか深い眠りについていました。また、次回、頑張ります……。お休みなさい……。

 

              

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