映画館事件簿

 

 

★1976年2月28日(土) OS劇場で起こった疑惑事件!

 

  日本の真珠湾攻撃を描いた戦争大作『トラ・トラ・トラ!』を観ていた時の事。この映画、今では珍しいが、途中に休憩が入る作品。俗に云う“インターミッション”というヤツで、昔の、長時間大作には、みんな途中に休憩があったっけ。

 第1部が終わり、僕が休憩時間にボーっとしていた時に、それは起こった。当時この劇場は全席指定席で、チケットを買って中に入ると、案内係の女性が数名いて、彼女たちに案内してもらって席に座るというシステムになっていた。その内の一人が、ボーっと休憩している僕の方をジーっと見ていたのが事の始まりだった。「ナニ見とんネン」と、心の中でつぶやいた のも束の間、その案内嬢が、ツカツカと僕の方へやって来るではありませんか。で、僕の傍までやってきて一言、「失礼ですが、チケットを拝見させて貰えませんか?」とヌカしやがった。「何でやろ?」と疑問に思ったが、まぁエエやろと見せてやったら、暫くチケットを見つめていたその女、今度は「この席ではありませんネ」とホザきやがったではないか。「そんな筈はないのに…」と思ったのだが、そういえば僕は案内嬢に案内してもらわずに、自分でこの席に座ったっけ、てな事を思い出し、それで間違えたかも知れないと思い始めると、すかさずその女、「もしこの席にお移りになられるのでしたら、お直り料金を頂戴しなくてはなりません」と言いやがった。そうか、指定された席よりも、高い料金の席に座ってしまったのか、それで追加料金を払わなくてはならないのかと、とにかく焦りめた僕。暫く、両者の間に長い沈黙が続いていたが、そろそろ場内が暗くなり、第2部の上映が始まろうとしたその矢先、いきなりその女「アッ、この席で間違っていませんネー」と、言ったではないか。一瞬動きが止まった僕。「そりゃそうやろ、始めから合ってるんだから、間違ってる訳ないデェ」と、思いっきり文句を言いたい気分だったが、映画はもう始まっているし、何とかそっちに集中しなくちゃと思っていたので、無視してスリーンに目を向けたら、しつこいその女、謝るのかと思ったら、何と「この席で観やすいですか? もし他の席に替わられるのであれば、お直り料金で替われますけど」とホザきやがっ た。「アホ!俺はこの席が一番エエんや!誰が替わるか!」と、大声出して言ってやろうかと思ったが、まぁ第2部も始まっている事だし、映画の雰囲気を壊したくなかった事もあり、取り敢えず小声で、「結構です」と言ってやった。

 当然スコスコと退散したその案内嬢だったが、しかし、よく考えてみれば、アノ女、俺の事をまるで席泥棒の犯罪者扱いしやがって、それで自分が間違ったのに、「すみません」の一言も言わないなんて、ハッキリ言って言語道断。常識はずれもイイとこ。サービス業としてはもっての他の対応には、もうブチ切れ寸前。

 と、興奮しかけたのだが、よーく冷静になって考えてみると、実はその日の回、場内はガラガラの状態で、わずかの人たちが、ほぼ真ん中の席に集まっていたのに、僕一人だけが、前から5番目の席(シネラマの大画面の迫力を楽しみたかったからなんだけど…)に座っていたのを確認。そう、僕だけがポツンと前の方にいたので、案内のバカ女が、僕が席を替わったものだと勘違いしたのだろうと、自分なりに推測したのだが、それにしても一言のお詫びもないというのはドーしたものか。お陰でその後の第2部、これから面白くなるというのに、もう雰囲気は台無しだった。あんな女は即刻、クビだー!

 

                           

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