映画館事件簿

 

 ★1976年3月24日(水) SABホールで起こった淀長事件!

 

       

 

 映画館ではなく試写会での事。我が三船敏郎が主演したナマクラな家族愛映画『太陽にかける橋/ペーパー・タイガー』という映画を観ている時、いや、観る前にその事件は起こった。

 その日の試写会、あのサヨナラ・おじさんこと、映画評論家の淀川長治さんがゲストに来て、上映前に解説があるとの事だったので、大いに喜んでいたら、トンでもない事になった。とにかく、話し出したら全然止まらないのである。

 普通、試写会なんかの解説といったら、上映前に10分程度喋ったらそれで終わり(主催者の説明だったら3分ぐらいで終わっちゃう)なのに、淀長さん、その日上映される 映画の事なんかほっといて、もう喋る、喋る。自分の事、人生の事、生き甲斐の事、そして、淀長さんのモットーである“苦労よ来い”の話など、喋って喋って喋りまくって、思いっきり時間超過。そりゃあ確かに楽しい話で、実に為になったと思ったけど、でも講演会じゃないんだから、その後に予定されている肝心の映画は、一体いつ観られるのかと、ちょっと困ったものだった。

 午後6時半からの上映予定が、おしておして、時計を見たらもう7時半を回ってる! 取り敢えず1時間強、お話になって、一旦休憩時間になったら、ロビーの電話に殺到する人多数。そりゃあそうだと思う。少なくとも帰りが1時間は遅くなるんだもん。また、「この映画の上映時間、一体何時間や!」と、いつ終わるのか心配している人も大勢いて、休憩時間中はちょっとしたパニック状態。

 結局、その後上映された『太陽にかける橋/ペーパー・タイガー』という映画、多分ほとんどの人は、時計を見ながら、「まだ終わらないのかナー」と、ジッと耐えていて、印象なんかほとんど残っていなかったんじゃないかと思う。僕もそうでした。

 ネェ、淀長さん、今度、楽しくて素敵な話をもう一度ジックリと聞かせて下さい。試写会ではナシに。と、今度会ったらお願いしようかと思っていたのだが、結局言い出せないまま、淀長さんは天国へサヨナラしてしまった。合掌・・・・。

 

 

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