ビデオよもや!?話

 

第5回 『血まみれ農夫の侵略』

 

  皆さんこんにちは。如何お過ごしですか。大好評(?)のビデオよもや話です。今回で無事に第5回目を迎えました。

 さて、今回ご紹介するトンでもビデオは、『血まみれ農夫の侵略』です。実はこの作品、最近リリースされた新しい映画ではありません。もうかなり前、10年 以上も前になりますか、そう、ちょうどビデオのバブル期に、にっかつビデオからリリースされた、名もなき未公開ホラー映画です。

 当時は、このにっかつを始め、大手のメーカーは勿論、今は無くなってしまった弱小メーカーも含め、挙って未公開ホラー映画のリリースに躍起になっていました。何故かというと、理由は簡単。世の中、ちょっとしたスプラッター・ホラー・ブームだったという事と、もう一つは、この種の未公開ホラーというのは、ビデオ化権を容易に取得する事が出来、おまけに権利金も安い事から、様々なメーカーから、それこそ、映画史上に輝く傑作から、観て1分と経たない内にビデオを投げ出してしまうような駄作まで、それはそれは、沢山のホラー映画が世に送り出されました。

 で、そんな中の1本がこの作品で、この過激なタイトルからして、当時はちょっとした話題になっていました。というのはウソで、誰からもソッポ向かれていた、カワイそうな映画でした。といっても、この種のジャンルの映画には、そういった事は付き物で、ハッキリ言って、ビデオ・カタログ等にタイトルは載っているものの、レンタル店にも姿を見せず、結局誰も現物を見ないまま、この世から葬り去られてしまうというパターンが結構多いのでした。

 実際に僕が観たのは、もう数年前の事なので、“最近ビデオで観たトンでもない映画を紹介する”このコーナーの主旨には反するのですが、とにかく一度はこの映画のトンでもなさを誰かに伝えておきたいと思い、こうして今回、取り上げさせて貰った次第なのです。

 ま、とにかく、この種の映画には、結構騙された経験をお持ちの方もいらっしゃる事でしょう。タイトルだけは面白そうだけど、実際に観てみたらトンでもないしょうむない映画だったって事が。劇場で一度でも公開されている作品なら、ある程度の情報は入ってくるものですが、殊未公開映画、しかも誰も知らないスタッフやキャストで作られた映画なんか、もうその時点で怪しいというもの。ある意味、こういう知らない映画を観るのは(今でもそうですが)、ちょっとした賭けみたいな所があったのは事実でした。

 さてこの映画、タイトルにある通り、血まみれ状態の農夫が侵略してくる、実に何とも恐ろしい映画だと、まぁこれは、観る前なら誰でも思ってしまう事ですよネ。実際に僕もそうでした。で、観終わりました。ハッキリ言って、観ている間中、目が点になりっぱなしで、そのまま目が腐ってしまうんじゃないかと思うぐらい、腐り果てた映画になっていました。ある程度予測していたとは言え、やっぱりショック。

 それでも、スプラッター・ホラーならスプラッター・ホラーで、その種の、つまり、グロテスクなスプラッター・シーンがあれば、ストーリーが少々つまらなくたって、我慢できるというものですが、この映画の場合、そんなのは皆目ゼロ。というか、映画技術的にメチャクチャな未熟なシーンが連発されていて、ほとんど素人が8ミリ・カメラ回して撮ったような、そんな下手くそな映画になっていた事の方が驚きでした。

 例えば、最初の方のシーンで、ある男が何者かに襲われたとおぼしきシーンを表現する為、フラフラと血まみれになりながら道を歩いているシーンがあり、そのシーンの後にカットバックして、何処かの酒場のシーンに変わって、マスターと客とが話をしているシーンがあるのですが、その時の会話によって、その 時間帯が夜だという事が分かるのですが、次にまた、そのフラついている男のシーンに戻ると、どうみてもそれは夜とは思えない、真っ昼間のような明るいシーンになっていて、思わず頭が混乱してしまいました。

 多分、別々に撮影したものを編集したのでしょうが、そんなの、撮影の段階で分かるというもの。それを全く無視して、そうやって映画を完成させているというのは、これはもう撮影ミス・編集云々では済まされない事でしょう。まぁ、夜間撮影となると、ライティングなんかの設備がどうしても必要になり、だから低予算映画の場合は、結構ムリが出てくるものですが、でも例えば、カメラのレンズにフィルターを被せる方法(アメリカ式夜間撮影法)もある訳だから、お金がなくても工夫次第でいくらでも出来るというもの。それをやっていないというのは、完全にやる気がない証拠でしょう。

 だったら、夜のシーンなかんて無くせばイイのにと思ってしまうのですが、ホラー映画に夜のシーンはつきもの。だからそれを無くすのは、と思ってみたら、何の事はない。この映画、その後からもずっと、夜のシーンなんて、全くない(夜の場面はあめけど、夜ですヨという事を説明するだけで、何も起こらない!)のでした。

 ストーリーはというと(今頃ストーリーを説明しているが…)、昔の因習から、生きた人間の血を採集して、悪魔を蘇らせようとする農夫の集団が、人々を次々に襲うというもので、それを察知した博士とその娘が、危険に晒されながらも、その恐怖に立ち向かう……、ナンて聞くと、いかにも面白そうなスプラッター・ホラーっていう感じですが、まぁこれは一度観て頂かないと本当のつまらな さというのは分かって貰えないと思いますが、そんなストーリーなんて、有ってなきの如く展開される、数々の間延びシーンばかりのオンパレードで、まぁこれ観て腹立たない人、ビデオを投げ出してしまわない人というのは、相当我慢強い人だと、僕は尊敬してしまいます。

 それに、ビデオのパッケージの裏には、下のようなスチル写真も載っていて、全然知らない人が見れば、「凄い!」と思ってしまうようですが、ハッキリ断言し ます。そんなシーンは1秒たりとも出てきません!

 という訳で、昔リリースされたスプラッターものの中には、ヒドいモノがあると

いう事が分かっただけでも儲けもの(どこが?)のこの映画、それでもイイから 「私は観てみたい!」という覚悟の座った人、誰か挑戦してみませんか。もう二度とホラー映画なんて観たくない、と思ってしまう事絶対です。

 因みに、何処のレンタル屋さんへ行っても、この映画のビデオがないという現状、多分、以前に借りて観た人が、怒ってビデオ・テープを粉々にしてしまったからだと思われます。観た人全員がそれやったら、そりゃあ、世の中から無くなってしまうのも、当たり前でしょう。何処か、誰もこれを借りていないレンタル店の端っこで、貴方の来るのを、ずっと待ち構えているかも知れないので、全く流行ってないレンタル店へ行った方が、ゲット出来る確率は高いと思います。でも、そんな店ならとっくに潰れてると思いますが。

        

これがパーケージ裏に載っていたスチル写真。死体から内蔵を取って食べる農夫さんたちの記念写真ですが、こんなシーンは何処にも見当たらない!

 

                             

          

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