ビデオよもや!?話

 

第8回

『炎のいけにえ』

 

        

前回の『ジャガーbP』同様、中古ビデオで安く入手した作品です。結構、店によってはプレミア価格が付いていたりするのですが、今回、今まで見た中でも、特に安い値段だったので、思わず買ってしまいました。どんな結果になるのかも知らずに…。

 確か、かなり前にテレビ放映で一度見た事があった映画だったっけ。イタリア映画お得意の、殺人ミステリィで、合間に残虐な殺しのシーンがあって、ましてや主人公のミムジー・ファーマーが死体解剖医という役柄だけに、オゾましいシーンが続出するという…、そういう認識でいたのですが、今回、久しぶりにビデオで観てみると…。

 ストーリーは、全くの記憶通りでした。ま、実際にはイタリアとスペインとの合作でしたが、そんな細かい所はさておき、この映画の見せ場は、まずオープニング・シーンにあります。先ほども言ったように、ミムジー・ファーマー(懐かしいです)扮する主人公は、死体解剖医なので、開巻からいきなり、殺人や自殺で死んだ人たちを解剖するシーンから始まります。

 

主人公の女医に扮するミムジー・ファーマー。アルジェントの『四匹の蝿』『コンコルド』など、イタリア製ゲテモノ映画ではお馴染みの顔。『暗黒街のふたり』では、アラン・ドロンの恋人を演じた。いずれにせよ、懐かしい…。因みに、1945年生まれはミア・ファローと同じ。別に意味はないですが…。

 

原題は“The Victim”つまり、“いけにえ”なので、この邦題は、合っている。しかも、ご丁寧にも、タイトル・バックは“炎”だ! 当時の配給会社・東宝東和にしては、珍しくまともだったようだ…。

因みに、このビデオは英語発声版。イタリア公開タイトルは、“Nonsi deve Profanare il sonno dei Morti”というもの。直訳すると“死体解剖医・恐怖の夜”という意味、らしい。(大ウソ!)

 

 これがなかなか結構エグいというか、ショッキングなんですよネ。実際の解剖シーンは、ダイレクトに描写されないのですが、じゃあ何が見物かというと、死体解剖中に、何故だかいきなり、解剖途中の死体が、ムクムクと起きあがり、ゾンビの如く、主人公に襲いかかって来るという、ホラー・ファン、特にゾンビ映画ファンにはタマらないようなシーンが、登場します。

 確かに死んでいる死体(ヘンな表現ですが…)が、突然目を開いて、主人公に微笑みかける、なんてシーンもあって、「これは一体何だ…!?」と、ショッキングな幕開けに、この映画に対する期待は、膨らむ一方になるのは、ゾンビ映画ファンならずとも、みんなそうなってしまいますよネ、きっと。

 

頭をかち割られて解剖される黒人の死体さん なのに、突然、微笑む死体さん
立ち上がってスマイル! こちらは、オバサン死体さん。
血だらけ、です。死体だから、当然ですが…。

 

死体どうしでいきなり交わる人たちも…。

 

 【なお、これらの写真が、多重露光になっているのは、撮影の仕方が悪いのではなく、主人公の幻覚だから、です】

 

 こういうシーンがオープニングから展開されて、さぞかしこの後、もっと恐ろしいシーンが展開するんだろうナ〜と期待するでしょうけど、正直に言います。確かに恐ろしいです。でも、その“恐ろしい”という意味合いが違います。何故なら、この映画でショッキングなのは、実はこのオープニング・シーンだけ、という恐怖と衝撃が待っていたからなんです。…オイオイ…。

 これにはマイりましたネ、ホント。しかも、これらの死体云々の映像って、みんな主人公の女医さんの、幻覚なんですよネ。毎日、死体解剖ばっかりやっているから、そのストレスが溜まって、ついつい、こういう幻覚を見てしまう、という訳で、この後も、チラっと、その種のシーンが出てくるものの、それはこの映画の本筋とは、全く関係がなかった(!)というオチがついて映画は終わります。

 いや、正確に言うと、この後、彼女の周りで、猟奇的な殺人事件が連続して勃発。犯人は一体誰? という、よくある展開になる訳ですが、肝心なのは、それらの殺人シーンが、あまりに間接的に描かれ過ぎている為、この種の映画にありがちな、スプラッター・シーンが皆無という、情けない仕上がりになっていまして、最後に明かされる、意外な犯人の設定というのも、ありきたり過ぎて、その発想は、テレビの2時間ドラマ風という、カックンなものでありました。

 つまり、この映画の見せ場は、オープニング・シーンだけにあると言えて、それがポスターやスチールの宣材として広く出回っているものだから、全編、そんなシーンの連続なのかと、勘違いしてしまうという、いわば、トホホ映画の見本のような映画だったという訳です。まぁ、マンマと騙されてしまったんですネ…。

 

ボーイフレンドの死に顔を見て驚く女医と、死んだマネをするボーイフレンド役のレイ・ラヴロック。因みにレイ・ラヴロックは、一時は女性ファンからキャーキャー言われるアイドル的存在だったのに、『悪魔の墓場』でゾンビ映画に出てからは、こんな映画ばっかりに出演。『カサンドラ・クロス』も、そんな1本、かな!?

 

 昔、テレビで観た時の記憶の断片とか、ポスターやスチル、或いは噂などを聞いて、この映画をもう一度観たいと思われる方もいらっしゃるかと思いますが、断言します。ヤメた方がイイです。これだとまだ、同じようなタイトルの『恐怖のいけにえ』の方が、3倍ぐらい、マシでしょうか…。(中途半端やナ〜…)『悪魔のいけにえ』に至っては、100億倍ぐらい違うので、“いけにえ”というタイトルが付いたホラー映画だからといって、タイトルに騙されないようにして欲しいものです。

 

書き忘れましたが、音楽は大御所・エンニオ・モリコーネが担当してました。だから、音楽だけは、イイです。と、言える程のものでもなかったですが…。仕事を選ばないのが、モリコーネの唯一の欠点と言えるでしょうか。

監督のアルマンド・クリスピノに関しては、別にド〜でも、イイですよネ。ユーロ・ホラーに詳しいマニアの人にお任せしたいと思います。

 

inserted by FC2 system