ビデオよもや!?話

 

第9回

『新・死霊のはらわた』

 

 あのサム・ライミ監督の名作スプラッター・ゾンビ・ホラー『死霊のはらわた』の、え〜っと、これが第…、第…、第何弾…?確か、『死霊のはらわた』『死霊のはらわたU』『キャプテン・スーパーマーケット』の3作が、ライミ自身による正式な“死霊のはらわたシリーズ”の筈で、これ以外というと、『死霊のはらわた/最終章』というのがあるけど、これは別物らしく、では、今回のこの作品は…?

 “新”なんて付いている所をみると、結構怪しいけど、ビデオのパッケージには、サム・ライミの名前が大きく表示してあるので、もしかして、シリーズ第4弾か! と勘違いしてしまうのは、相当なおバカさんでしょうね。そんな訳ありません。でも、超間接的に、サム・ライミが関係しているのは、間違いないのですが…。

 

原題はこれ。『死霊のはらわた』とは、何の関係もありません…

 

 映画は、ボウ博士の研究室から始まります。その博士が作った菌が死体に作用すると、どうやらゾンビが生まれて(?)しまうようで、「こりゃ大変だ!」とばかりに、娘を地下室に避難させようとしますが、そこへ息子がやってきて、それで…という、意味深なオープニングですが、大体何故そんな研究をしていたのかは、誰も教えてくれません。

 よく考えたらこの映画(と呼べるモノかどうか…)、ビデオ撮りしてあります。ドイツのオラフ・イッテンバッハ監督の『バーニング・ムーン』や『新ゾンビ』もそうでしたが、海外では、素人(?)がビデオでゾンビ映画を撮り、それが劇場公開されるというパターンが多いようです。やっぱり、ビデオ撮りの方が、コストも安いし、手軽だからなのでしょうか…? でも、画面の厚みというものが、全くないのは、まぁしょうがないですね。素人映画だから…。

 で、次のシーンは、とある町のビデオ・レンタル店。ロメロの『ゾンビ』や『死霊のはらわた』のビデオを借りに来た客が、実はゾンビだった(!)というのは、あまりに低俗過ぎて笑う気にもなれませんが、作り手は、ゾンビ映画にオマージュを捧げたつもりになっているんでしょうネ〜。でも、この程度がオマージュなのか! って、ロメロやライミが怒っている姿が、目に浮かびませんが、まぁ、無視しているとは思います。

 

一番上が『ゾンビ』、次が『悪魔のいけにえ』で、3番目が『死霊のはらわた』、そして一番下が『クリープショー』だと思われ…ちゃんとゾンビ映画(+1)をセレクトして、レジまで持っていける能力はあるようです…

 

 つまり、レンタル店にビデオを借りに来るゾンビがいるぐらい、既にゾンビが巷に溢れてしまっているという状況の中、何とかして、この蔓延した“ゾンビ病”を治癒させようとする、科学者チームが登場。必死になって、ゾンビ病の研究に勤しみます。

 因みに、その科学者チームの中に、サヴィーニ博士というのも登場するのですが、これはもしかして…? 単なる偶然だとは思いますが…。

 

 

コイツがサヴィーニ博士。ちょっと細川俊之に似てる…

 

 一方、街中に溢れだしたゾンビを征伐する為に、SWAT(ZOMBIE SQUADという名前が付けられている)が登場。各々銃を手に、ゾンビ狩りを始めますが、まぁ、この辺りは、まんまロメロの『ゾンビ』ですね。隊員の一人がゾンビに噛まれてゾンビになっちゃうってのも、『ゾンビ』そのままの設定で、4人の内一人が女性だっていうのも、『ゾンビ』と同じ割合という事で…。

 因みに、その討伐隊のリーダーの名前がライミ。何処かで聞いたような…。多分、これも偶然ではないかと…。

 

この人が、主人公的存在のライミさん主人公なのに、最後には…

 

 科学者チームは、ボウ博士の研究から、ゾンビを人間化(?)させる血清を作る事に成功。これをゾンビに打てば、ゾンビは人間になるんだと力説…って、アンタ、ゾンビは最初から人間でっせ。この辺り、ゾンビを何かと勘違いしている部分もあるようですが、その為にはゾンビが必要だという事で、何と勝手に、噛まれてゾンビになりつつある討伐隊の隊員の一人に血清を打っていまいます。「オレの部下に勝手な事しやがって!」とお怒りになるライミ隊長。この辺りの展開は、『死霊のえじき』みたいです。

 

科学者チームのリーダーが一番右の博士。それにしても、研究室で野球帽とは…。

 

 その様子を遠目から眺めていた人々がここで唐突に登場。彼らは、何と「ゾンビにも人権を!」というスローガンを掲げた、ゾンビ庇護委員会の面々だとか…。そのリーダー名がカーペンター…で、彼らは、教会を本拠に活動していて、その教会の神父が、彼等をまとめる教祖的存在で、その名前がジョーンズ(教祖としては、ピッタリの名前ですが…)…。

 彼等は教会の地下にゾンビを飼っていて、生きた人間を生贄にしては、その血を啜る黒魔術の儀式を開催し、挙げ句に死んだ人間をゾンビの餌にしていたという、いわばカルト教団であったという事が判明。さらに、彼等にとっては、ゾンビを征伐しようとするSWATと科学者は、つまり敵だという訳で…。

 

左が「ゾンビを守る会」のリーダー、カーペンターで、右が教祖のジョーンズ神父。それにしても神父さん、トンでもない事を仰っています。

 

 ナンか、書いていてバカバカしくなってきましたが、その後は、SWAT、科学者チーム、カルト教団、そしてゾンビとが入り混じってのバトル・ロワイヤルが展開し、ほとんどの人間が、ゾンビの餌食になってサヨナラという結末で、ストーリーはハッキリ言ってバカバカしいです。でもまぁ、ゾンビ映画なんて、大体パターンが決まってしまうものなので、それもしょうがないかとは思いますが…。

 取り敢えず、ゾンビが人を喰ったり、ゾンビが銃で撃たれたりという、お馴染みのシーンは、素人が作った映画にしては、なかなかの出来で、それだけを採り上げたら、なかなかポイントが高いと言えましょうか。少なくとも、イタリア製のつまらないゾンビ映画に比べると「やる気」だけは大いに伝わってきます。

 ただ、やはり、1本の映画としては、全体的に破綻していて、観ていて「???」と思ってしまう箇所は、枚挙に暇がないので、やはり“素人映画”の域は脱していないというか…、サム・ライミに、「こんなの作ったんだけど、どうですか!」と訊いてるような、まるで映画学校の生徒のような態度がミエミエで、普通の映画を見慣れた目からしたら、かなり酷い出来である事は間違いないでしょう。

 ラストは、まるでゾンビ映画の怪作『ヘル・オヴ・ザ・リヴィング・デッド』のようなエンディングを迎えて、それがあたも“アッと驚くドンデン返し”のように唐突に映画は終わりますが、実は、そこから後に、もっと恐ろしい、というか、腹立たしいシーンが待ちかまえていたのには、ビックリしたと同時に、ハッキリ言って、その瞬間、ビデオ・デッキに、キックをかまそうかと、本気で考えてしまいました。で、その問題のシーンとは…!?

 その後延々と、エンド・クレジットが、何と18分も続くのである! しかも、登場人物の紹介の所では、みんな場面写真付きで紹介されるという、まるでジョン・スタージェスの映画のような構成になっていて、こんな素人映画でそこまでする必要があるのかと、さすがの僕も怒り心頭でした。ある意味、このエンド・クレジットが、僕にとっての“ドンデン返し”だったような…。

 

このように紹介されている訳だけど、左のスコット・スピーゲルって、『死霊のらわた』第一作のプロデューサーじゃなかったっけ…?それと真ん中の男は、実はこの映画の監督・製作・脚本・音楽・演奏・編集を一手に引き受けている現代のチャップリン(怒)、J・R・ブックウォルターなる人物。コイツも出ていたんだ…。そして一番右が、問題のボウ博士。このオヤジがいなければ、ゾンビも発生しなかったのに…。

 

しかし、エンド・クレジットが18分っていうのは、尋常じゃないですよ、ホントに。そのエンド・クレジットを除くと、本編の実質的なランニング・タイムは、たった63分しかないというのには、呆れてしまいますが、しかし、ほんの少ししか出てこないチョイ役までも、場面写真付きで紹介されているというのは、これは一体…!?

 多分、「僕の映画に出演して協力してくれた人は、お礼に全員、エンディングで紹介しますよ!」なんて、監督が言ったからではないかと思われるのだが、そんなのを見て喜ぶのは、紹介された当人たちだけであって、全然関係ない第三者のビデオ鑑賞者(つまり、僕)にとっては、苦痛以外の何物でもないじゃないか!

 それなら最後まで観なければイイのに…と、突っ込まれそうだけど、一応、映画はエンド・クレジットが終わるまで最後まで観るべし、という事をモットーにしているので、そういう訳には行かなかったという次第。ま、劇場でならともかく、ビデオなので、自由に早送りや停止ボタンを押せるのですが、それをせずに最後まで延々と苦痛に耐えながら観てしまった僕を、誰か誉めてやって下さい…! トホホ…。

 

ビデオ・ジャケットには、“サム・ライミ製作総指揮”と書いてあるのですが…で、実際は…?

 

 と、思って、エンド・クレジットを目を皿のようにして見てみましたが、結局、何のクレジットもなかったような…。劇中でSWATの隊員が、テレビで『死霊のはらわた』を観ているシーンがありましたが、もしかして、それだけの事では…!? だったら、大ウソですね、このキャッチコピーは。最後まで観て、やっと、“サム・ライミ”という名前に騙された、と思いましたデス。情けない…。

 

因みに、『死霊のはらわた』の主演者・ブルース・キャンベルが、何故か音響監修でクレジットされていました…。後輩(?)の為に一肌脱いだ、という事なんでしょうか…。

 

最後に、この映画の監督の顔を、もう一度見せておきます。今度、コイツを町中で見掛けたら、思いっきり張り倒してやろうかと思います。「オレはコイツを許さない…」

 

 

            

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